投資で成功する人・失敗する人はどこが違うのか。FPの黒田尚子さんは「投資で成功できる人は、正しい金融知識を持ち、儲けようとがっつくことなく、バランス感覚のある人だ」という――。

少し立ち止まって考えたい「投資に向いている人・向いていない人」

日本経済がトランプ関税に翻弄される中、FPである筆者のところにも、先行き不透明な状況下で「投資を続けても大丈夫か?」という経験者からの声と同時に「今、投資を始めるべきか?」といった“新人さん”からの相談も多く寄せられている。

2024年から新NISAが始まった影響もあり、投資信託の保有者比率も急速に増えている。だが、だからといって国民の金融リテラシーが向上したわけではない。「NISAってどこで買えますか?」と質問する相談者もいるほどだから、正しい金融知識を持たないまま雰囲気に流されて、投資スタートした人も多いはずだ。

このような方々にとって、今回のトランプ関税を端緒とする経済状況の混乱は、自身のリスク許容度を冷静に見極め、ポートフォリオを見直すいい機会になるかもしれない。

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20代~30代は、本当に「リスク許容度」が高いのか?

マネー相談を受けていて思うのは、新NISAの影響を最も受けているのは20~30代の若年層だということだ。彼らの弱点は「リスク許容度」が高くないことだ。

一般的に、この年代は中高年に比べて時間があるため、もし失敗しても取り戻せる、という点で「リスク許容度が高い」とされている。たしかに、長期的な視点ではそうだが、この世代の最大の問題は「収入や貯蓄額が少ない」という点である。

筆者は、投資をするのは、生活防衛資金(生活費×3カ月分)を貯めてから、とアドバイスしているが、これを守る人は少ない。「相場が右肩上がりなのに、チマチマ貯めている時間がもったいない」と、リスク資産(株式や投資信託)に全フリしてしまう人が後を絶たない。

若年層は、病気のリスクは相対的に低い。だが、精神疾患に関しては統合失調症、うつ病など若いうちから発症するケースも多く、交通事故の発生率は40~50代よりも20~30代のほうが高い。思いがけぬ事故や病気という災難に襲われ、働けなくなるリスクがあるのだ。そんな時に、資産を「全フリ」していると痛い目に遭う。