次世代型の教育は「個の独立」と「群の創造」

VUCA時代を迎えた今、次世代型の教育は「個の独立」と「群の創造」の双方を満たす方向になっていくと、私は考えています。

まず、氾濫する情報に流されることのない独自の視点をもち、自分の頭で考えて主体的に行動できる「個の独立」が必要です。

また、現代は、社会課題が高度に複雑化し、それに対応する社会の在り方も専門化していることから、チームによる課題解決が主流になっています。そのためには、「群の創造」ができる力が必要なのです。

学校教育の世界も、突出した才能をもつ個人よりも、チームをつくって動ける人間を育てる方向に舵を切りつつあります。

独立した個性をもち、他者とコラボレーションする力を育むために必要なのが、感性の豊かな中高時代に、仲間と力を合わせて1つのものをつくりあげる体験です。

学園祭や体育祭は組織の中での動きを学べる

工藤誠一『VUCA時代を生き抜く力も学力も身に付く 男子が中高6年間でやっておきたいこと』(KADOKAWA)
工藤誠一『VUCA時代を生き抜く力も学力も身に付く 男子が中高6年間でやっておきたいこと』(KADOKAWA)

本校でいうと、学園祭や体育祭などがそれに当たります。もちろん、始めのうちは失敗だらけです。

そもそも中高生男子はプライドが高く、自分の能力にそれなりの自信もあるので、一人で抱え込んでものごとを推し進めてしまいがちです。しかしすぐに、自分の頭の中では完璧だったはずの計画が、実際に手を動かしてみると全くうまくいかないことに気づきます。

そして、そのことに周囲も気づき始め、やがてどちらともなく声をかけて、一緒に計画を見直したり、手を動かしたりし始めます。そんなふうにして、不器用ながらもコラボレーションが始まっていくのです。

こうした体験が、ネットワークをつくるトレーニングになり、組織の中で自分がどのように参加していくのかを学ぶ機会になっていきます。

それは、机上の学習では得られない貴重な学びです。家庭とも予備校とも違う学校教育の意義が、ここに宿っているのです。