アート表現を学ぶ「選択芸術講座」を実施

聖光塾と同じ2002年から続けているのが、中2全員を対象に、さまざまなアート表現を学ぶ「選択芸術講座」です。

通常の音楽や美術の授業とは別に、陶芸、木工、演劇、バイオリン、クラシックギター、声楽、変わったところではパイプオルガンなどの中から自分が興味をもった表現を選択し、専門家の下で1年かけて表現の基礎を学び、学年の終わりには発表会を開きます。

バイオリンを弾いている人
写真=iStock.com/suteishi
※写真はイメージです

本校の生徒は、小学校時代、音楽や図工が得意だった子ばかりではありません。しかし、仲間と1年かけて楽しみながら表現力を身に付け、本番の舞台や作品展では努力の跡が見える立派な作品を見せてくれます。

週1回、2時間ずつの講座ですから、プロフェッショナルの養成が目的ではありません。選択芸術講座の目的は、国際人として、普遍的な美に関する感性や表現力を養うこと。鑑賞から創作、演奏へと一歩踏み込むことで、グローバルな現代を生きる彼らに、言語によらない自己表現力を身に付けてほしいのです。

聖光塾は任意参加の講座ですが、選択芸術講座は正課の授業です。カリキュラムが他の教科で目一杯の中でも、あえて芸術科目に重きを置いているのです。

人間的成長には「文化的な成熟」が必要

進学校にもかかわらず芸術に注目するのは、人間的な成長のためには「文化的な成熟」が必要だとの強い思いからです。

その原点は、私の中学校時代に遡ります。私は当時小説や詩を書くのが好きで、仲間との同人誌制作に熱中していました。また、先生方が芸術鑑賞委員会という組織をつくり、昼休みにクラシックのレコードコンサートを開いたり、休日には上野で開催されていたドラクロワ展に連れて行ってくれたりしました。

私が生徒だった頃の聖光学院には、そうした文化的な雰囲気がありました。芸術に触れるときの心が震えるような喜びは、つらいことがあったときに心を慰め、また前を向かせてくれる支えとなりました。自分自身の体験からも、生徒の姿からも、人間的な成長のためには文化的な成熟が必要なのだと確信しています。