家族や周囲みんなでワクチン接種を
乳幼児、さらには受験生が百日咳にかからないようにするためには、本来であれば周囲の人が病原体を持ち込まないことも重要です。
具体的には、両親やきょうだい、同居の祖父母など、日常的に接触する家族全員が百日咳の免疫を持っておくことが推奨されます。こうすることで、たとえ周囲の誰かが百日咳菌を持ち込んでも、免疫力で守られる確率が高まります。
海外では、特に妊婦さんへの成人向けの百日咳含有ワクチン(Tdapワクチン)が、赤ちゃんを百日咳から守るうえで効果的だと報告されています。お母さんが妊娠後期(妊娠7~9カ月ごろ)に百日咳含有ワクチンを接種すると、母体内で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生後しばらく赤ちゃんを守ってくれるのです。実際に米国や欧州では妊婦への接種が広く行われています。
残念ながら、日本では成人向けのこのTdapワクチンは未承認で、一部の専門の医療機関で輸入している以外は取り扱いがありません。輸入ワクチンで取り扱いがあるところでは、1万円前後で提供されています。
また、小児用の3種混合ワクチン(DTaP、小児期に使うものと同成分)を11歳以上の年齢層にも使うことは国内でも承認されています。成人用の輸入ワクチンより副作用がやや多い可能性もありますが、希望すれば妊婦でも小児用の接種を受けることも可能です。赤ちゃんのために接種を望む場合は主治医に相談してみるとよいでしょう。
いずれにせよ、乳幼児や児童・生徒、妊婦のいる家庭では、本人だけでなく、家族全員が百日咳の免疫を確認し、必要に応じて追加接種を検討することが勧められます。過去に百日咳にかかったことがなく、幼少期の定期接種以降ワクチンを受けていない大人の方などは、上述にように任意で自費になりますが、小児用DTaPワクチン、もしくは成人用輸入ワクチン(Tdapワクチン)を取り扱っている医療機関での接種を検討するとよいと思います。
なお、百日咳と診断された場合、感染拡大を防ぐために抗菌薬(抗生物質)による治療を行います。一般的にマクロライド系抗菌薬が用いられ、発作的な咳が始まる前の時期であれば症状の軽減に有効ですが、耐性菌の出現が問題になっています。一旦激しい咳の時期(痙咳期)に入ってしまうと抗菌薬で症状そのものを止めることは難しくなります。
それでも抗菌薬治療には他者への感染力を低下させる効果があるため、患者本人の回復を助けるというより周囲への2次感染を防ぐ目的で治療が行われる場合があります。学校保健安全法においては、「学校感染症(第2種)として、特有の咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌性物質による治療が終了するまで出席停止」と定められています。
もし、本人や家族が「2週間以上咳が続く」「ゼーゼーと息苦しそうな咳をしている」といった症状がある場合、無理をせず早めに医療機関を受診して相談するのがよいでしょう。また、周囲に乳幼児や高齢者、妊婦がいる場合は特にうつさないための配慮がかかせません。
いずれにせよ、日頃からの衛生対策も重要です。百日咳に限らず、基本的な感染症予防策が大切です。今一度、手洗い、手指消毒の徹底、咳エチケット(咳やくしゃみをするときはマスク・袖で押さえる)を確認し、体調の優れない人にむやみに近づかない、食器やタオルの共用を避けるといった注意をお願いできればと思います。


