年収700万円でも「低所得者」

年収700万円なら余裕のある勝ち組というのは、すでに幻想となりつつあるようです。

実は、給与から引かれる税金や社会保険料は毎年のように増えていて、2023年8月発売の『週刊ダイヤモンド』が「年収700万円の人の手取りはこの21年で51万円減!」という記事を出していますが、実は、51万円どころではありません。

5%だった消費税が2014年から8%になり、19年には10%となりました。結果、年収700万円のご家庭では、消費税だけでも年間20万円以上の負担増となっています。

さらにここ数年は、電気やガスといった公共料金をはじめとしてあらゆるものがウナギ登りに上がっています。マイホームを持った人は、住宅ローンそのものには消費税はかかりませんが、住宅を買った時の建物代にはかかっているので、そのぶんもローンで支払っています。

嗜好品やガソリンにも容赦ない増税

住宅関連以外にも暮らしを直撃する物価上昇はあり、負担はさらに増え続けています。特にガソリンは、政府の補助金縮小の影響が色濃く出ています。

経済産業省が2025年1月22日に発表したレギュラーガソリン1リットルの全国平均小売価格は185円10銭でした。

しかも、多少は円高になったとしても、今後、どんどん値下がりしていく兆しは見えません。高速のサービスエリアでは、すでに1リットル200円に迫る価格のところも出てきています。このバカ高いガソリン価格を引き下げるために期待されているのが、2024年、与党の補正予算に賛成するのと交換条件で国民民主党が署名させた「暫定税率をなくす」という3党合意。

車にガソリンを入れる人
写真=iStock.com/Mariakray
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ガソリンは1リットル185円だと、本体価格は約112円で、なんと73円が税金です。うち消費税込みで27円が暫定税率。ですから、「暫定税率をなくす」という3党合意が直ちに実行されれば、185円のガソリン価格は、すぐにでも158円まで下がります。

ところが、それはやりたくないのが与党。

しかも、通常ならこれだけガソリンが高くなってくると、選挙を踏まえて補助金を出すというのが与党の常でしたが、今回は国民民主党との約束があり「いま補助金を入れたら暫定税率の話が蒸し返され、国民民主は手柄になるがわれわれは非難を浴びる」という判断なのか、ガソリンの高騰については見て見ぬ振りを決め込んでいます。

そもそも「暫定税率」の「暫定」とは、辞書を引くと「一時的なもの」です。その「暫定」をすでに60年も続けているのですから、実質的な“増税”と言っても過言ではないのです。

たばこにも増税が迫っています。2026年4月から加熱式の税率を引き上げて紙巻きたばこの税率に揃えたうえで、たばこ全体の税率を2029年4月にかけて3回、1本あたり0.5円ずつ引き上げる予定です。

酒類については、2026年10月には発泡酒や第3のビールなどが値上げされます。ビールは、350mlの税金が63.35円から54.25円に下がりますが、一方で庶民の味の発泡酒や第3のビールの税金は46.99円が、54.25円に値上がりします。

ビールを飲みたばこを吸いながらコンサートを見る男性
写真=iStock.com/gilaxia
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ビール全体の価格を統一するとの名目ですが、実際は庶民に人気が高く売れている発泡酒や第3のビールに目をつけ、こちらに「網」を広げようということでしょう。

さらに、チューハイや低アルコールの蒸留酒、リキュール類も、350mlで税金が28円から35円に上がります。

【図表4】酒税改正(平成29年度改正)について
出典=財務省HP「酒税に関する資料」より

そのうえ、日本人の主食である米の価格までも2024年3月の2倍になっていて、政府による備蓄米放出はあるものの米価はさほど下がらないと予測され、物価高に悲鳴をあげる家庭が続出しています。