タワマンは引っ越し費用も高くつく

節約編の最後に、「どんな家に住むと引っ越し費用は安く済むのか」について髙倉さんに聞いた。大きな一軒家の引っ越しが最も高くつくと筆者は思っていたが、プロの判断は異なる。繰り返しになるが、引っ越し費用は「作業員が何人必要で、どれぐらいの時間がかかるのか」で決まるからだ。

「最も高くつくのは、タワーマンションの高層階からまた別のタワーマンションの高層階への引っ越しです。搬出用のエレベーターは入口から遠い場所にあることが多く、すべてに養生シートを貼らねばなりません。作業員は最低でも4人は必要で、駐禁を取られないための見張り、マンションへの作業申請などの事務処理もあります。うちは3月だけでも100万円の引っ越しを2件受注しました。荷造りから荷解きまでのオプション付きですが、引っ越し作業自体も通常の3倍は手間がかかります」

タワーマンションに住む芸能人のような顧客も多いTMCだが、高い客ばかりを相手にしているわけではない。アパートの1階に住んでいる人がまた同じようなところに引っ越す案件は数万円で済む。単身者の家具だけの引っ越しを3万円で請け負ったこともある。引っ越しはとにかく「人数×時間」なのだ。

「エレベーターの有無にもよりますが、集合住宅は4階以上になると引っ越し費用が格段に上がっていきます」

さて、髙倉さんに伝授されたノウハウをまとめよう。

(1)準備:引っ越しの準備は1カ月以上前から始めると良い。不要品は自治体の粗大ごみ回収サービスを利用して減らし、自分で少しずつ荷造りをする。

(2)交渉:おおよその荷物量を把握したら、引っ越し業者比較サイトは使わず、大手2社・中堅1社・地域密着1社の合計4社から自分で相見積もりを取る。その際、荷物量を把握できていない人だと思われないために、丁寧な文面作成を心がける。引っ越し日時を指定して料金を聞くよりも、一番安く引っ越しできる日時を各業者に聞くほうが良い。

(3)余談:引っ越し費用を下げたいのであればタワーマンションの高層階は避ける。
※タワマンには住む人は100万円程度の費用は気にしないという説もある。

以上が引っ越し費用の節約編だが、安いだけでは「引っ越しはおもしろい」「最高の引っ越しだ」とは思えない。髙倉さんには、気分がウキウキして新生活の運気が上がるような引っ越しも教えてもらいたい。近日中に「気分高揚編」をお届けする。

大宮 冬洋(おおみや・とうよう)
フリーライター

1976年埼玉県所沢市生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。著書に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せの見つけ方~』(講談社+α新書)などがある。2012年より愛知県蒲郡市に在住。趣味は魚さばきとご近所付き合い。