日本は5カ月連続の輸出増
前回も述べたように、トランプアレルギーをトランプエネルギーへと転換する思考が私たち現役世代には重要です。じつは私は、トランプ政権をけっこう評価し始めています。ここからは、日本に及ぼすポジティブな側面について述べてみたいと思います。
1つめは、関税政策が日本の輸出に与えた好影響です。2025年2月、日本の輸出は前年同月比11.4%増加し、5カ月連続の増加となりました。この背景には、ソニーグループなどによる関税発動前に出荷を急いだ「駆け込み需要」があるとも言われますが、特に米国向けの輸出は10.5%増加し、中国向けも14.1%増加しました。これにより、2月の貿易収支は5845億円の黒字となり、輸出依存型の日本経済にとっては追い風となりました。輸出入とは、そもそもがこうした流動的な結果の集積です。
トランプ政権による規制緩和や対米投資の促進も、日本企業にとってプラスと考えられています。2024年、日本企業による対米M&Aは820億ドルと過去最高を記録。これは前年の10倍以上の成長であり、ロイターの報道によると「バイデン政権下で過去最高だったので、トランプではさらに伸びる可能性がある」と専門家が指摘しています(*2)。
また、トランプ政策は大規模なインフラ投資を掲げており、日本の建設機械や自動車、防衛関連産業への受注増が期待されています。今後、こうした分野における日本企業の売り上げや利益率の推移は、日本経済全体への波及効果を見極めるうえでの重要な指標となります。
海外へのエネルギー依存度は約9割
さらに前回も述べたように、米国からのLNG(液化天然ガス)輸出拡大によって、日本のエネルギーコストが下がる可能性も見えてきました。この動きは為替相場や国際エネルギー価格の影響を大きく受けるため、リスク要因としても慎重に捉える必要がありますが、エネルギー供給源の多様化と調達コストの削減という可能性はおおいに認めるべき好転です。
2025年現在、日本のエネルギー自給率は非常に低く、約1割程度にとどまっています。資源エネルギー庁の資料によれば、2020年度のエネルギー自給率は11.3%であり、海外からのエネルギー依存度は約9割に達しているのが実情です。つまり、私たちが日々使っている電気やガスの多くは、海外からの輸入に依存しているのです(*3)。

*2 Trump's easing of regulations to trigger Japan outbound M&A, Citi exec says
*3 資源エネルギー庁「安定供給 日本のエネルギー 2022年度版『エネルギーの今を知る10の質問』」広報パンフレットより