「心理的安全性」が崩れてしまった
心理学の用語で表現すると、Aさんは安全基地だった祖母の死がトリガーとなり、「心理的安全性」が崩れてしまった状態です。
心理的安全性とは「安心して自分らしくいられる環境があること」を指します。家庭では子どもが話しやすい雰囲気を作ったり、家族や信頼できる大人と一緒に過ごす時間を増やしたりすることで、安心できる環境を作ることが大切になります。
焦らず、少しずつ心理的安全性を取り戻していくことが不登校の回復にもつながります。Aさんに必要だったのは、祖母がいなくなったことで失ったものだけでなく、今の自分に残されたものや新しい支えを見つけることでした。
また、大切な人を亡くしたり、大事な存在を喪失したりした時に引き起こされる身体的・心理的・社会的な反応を「グリーフ反応」と言います。特にストレスや身体の緊張が蓄積されやすいので、喪失感や不安に捉われ過ぎず、「今ここ」に意識を向けてリラックスする力をつけていくことも有効です。
学校に戻るために公認心理師と取り組んだこと
不登校の場合は、学校以外のコミュニティで安心して自分らしくいられる環境を持つことや「学校に行かない=ダメなこと」というプレッシャーを減らすこと、登校が目的ではない学校とのつながりを感じられるようにすること(先生と少し話す、友人とLINEでやりとりする)、達成感を感じられる活動を増やすこと(毎日少しでもいいので外に出る、好きな本を読む、家で料理をするなど)も効果があります。
Aさんは「学校に戻りたい」という気持ちを持っていたので、学校に戻る上で不安に感じていることを挙げてもらい、さまざまなワークも実践しました。まず、学校に久しぶりに行く、その最初の一歩が難しいということで、実践したのが「ビジョンタイムライン」。これは不安で踏み出せない時、自分がよい時の感覚を持って未来に行ってみるワークです。
過去に戻り、前向きになれた出来事を思い出します。そして実現したい未来をイメージしながら、前向きになれた時の感情や感覚をもう一度味わいます。例えば、ダンス部でメンバーと一体感を感じながら踊ることができた時のこと、球技大会で自分のシュートが決まって試合に勝った瞬間など、どんなことでもいいのです。自分にとっての成功体験を思い出すことで自信を築きます。


