原因が「学校に関係ない」ケースは意外に多い

わが子が不登校になった時、多くの親はいじめやSNSのトラブル、勉強のプレッシャーなどが理由なのではないかと考えます。実際、Aさんのお母さまも「親には言わないけれど、きっと学校で何かあったに違いない」と考えていらっしゃいました。

たしかにAさんはクラス替えや部活動、受験などさまざまな不安を抱えています。しかし、私がさまざまな不登校のクライアントさんと接してわかったのは、原因が学校に関係ないケースが意外に多いということです。

そもそも1つの出来事だけが不登校の直接的な原因になるケースは少ないです。例えば不登校に関する記事などで「原因は友達とのトラブル」などと書かれていることがありますが、それはあくまでもきっかけのひとつに過ぎません(もちろんいじめなど、トラブルの内容によっては直接的な原因となることもあります)。

根本にあるのは心の状態の変化です。心の健康度が高い時は、周りからさまざまなストレスが来ても柔軟なボールのように跳ね返せます。一時的にボールが凹んでも元に戻ることができます。しかし、強いストレスがかかったり、小さなストレスを感じたりする状態が長期的に続いてしまうと……ボールは硬くなり、跳ね返すことができなくなります。心が疲弊している状態です。この状態になると、学校という外の世界に適応するエネルギーがなくなってしまいます。

親も本人も気づいていなかった「本当の理由」

このため、不登校のカウンセリングでは学校以外の出来事……生育歴や家族関係などの情報も非常に重要になります。Aさんにも家族について聞いていく中で「これが不登校に関係しているのではないか」と思い当たることがありました。

それは「おばあちゃんが亡くなったこと」です。

Aさんからは「おばあちゃんが亡くなって悲しい」という訴えがあったわけではありませんが、雑談から学校を休みがちになった前年の年末、近くに住んでいた母方の祖母が病気で亡くなったことがわかりました。

実は祖母や祖父の死をきっかけに不登校になるお子さんは多いです。大切な人を失う喪失感や、人によっては身近な人の死を初めて経験して死への不安が大きくなることもありますが、それ以上に親とは異なる立場で自分の「安全基地」になってくれていた人を失ったことによる影響が大きいのだと私は考えています。

Aさんも子どもの頃から祖母の家で過ごすことが多かったそうです。Aさんにとって祖母は多くを話さなくても、どんな自分であっても変わらず受け入れてくれて、いつも味方をしてくれる存在。祖母の家はとても落ち着ける場所だったと言います。

祖母と公園を散歩する孫
写真=iStock.com/Halfpoint
※写真はイメージです

部活や友人関係、勉強などの不安やプレッシャーによるストレスを、以前は跳ね返すことができていたのでしょう。しかし、祖母という心の拠り所を失ったことで、エネルギーがなくなってしまった。それが不登校につながったのだと思います。Aさん自身もそのことに気づいていませんでした。