土葬を火葬にした上皇の意向
果たして今も、こうした煩瑣な葬送儀礼をくり返すことは必要なことなのだろうか。
宮内庁としては、それで予算を確保できるのかもしれない。役人はいかに予算を確保するかに力を注ぐ。
だが、皇室喪儀令をモデルとした葬送儀礼を続けることは、天皇や皇族に大きな負担を強いることになる。皇族の数が減り、公務の負担がその分大きくなっているなかで、葬送儀礼の簡略化は是非とも必要なことではないだろうか。
現在の上皇の意向で、土葬を火葬にするとともに、御陵(天皇の墓)が縮小されることになったのは、まだ天皇に在位していた2013年のことだった。葬送儀礼の簡略化は、そうした上皇の意向に沿うものであるはずである。

皇室喪儀令は廃止されてしまったわけで、天皇や皇族の葬送儀礼は法律によって定められたものではない。政府が決定すれば、すぐに実現される。
首相の決断が、今や求められているのである。
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。