日本の食卓を海外に発信する「Kimono Mom」誕生

海外の視聴者を意識し、日本らしく、かつ自分のアイデンティティーにもつながる「着物」と、育児をする自身をそのまま表現する「ママ」を組み合わせて「Kimono Mom」をタイトルに取った。

パオロさんの密着動画の公開からわずか1週間後の2020年2月22日、YouTubeチャンネル「Kimono Mom」がスタートした。最初の動画を公開すると、数日の間に2万人近くのフォロワーが集まった。そのほとんどが日本に関心を持つ海外の人たちだった。コメントを見ると、300万人以上のフォロワーを持つパオロさんのYouTubeをきっかけに、モエさんのファンになったフォロワーがいることもわかる。

Youtubeチャンネル Kimono Momより
2022年2月、最初に公開されたKimono Momの動画のワンシーン 

最初のうちは、慣れない編集作業のため、10分の動画作成に30時間以上かかったが、何かに突き動かされるように毎日休むこともなく動画を撮影・編集し、週1回のペースで配信していった。

「仕事がしたくてもできない産後の状況がつらかったので、現状を変えたい一心でした。『ある程度、自分が大変な思いをするようなことをしないと、自分を変えることはできない』そう思っていました」

自分を追い込みインスタライブも英語で

海外の人に向けた動画とあって、発信は英語だ。配信を始めた頃は、簡単なあいさつだけ英語で話し、残りは字幕を入れるだけだった。現在はインスタグラムのライブ配信を全て英語でこなしている。いったい、どうやって英語力をつけたのだろうか?

「配信のために3カ月くらい英語を集中的に勉強していた時期もありましたが、最近はなかなか勉強する時間がないです。英語の台本をAIのアプリに読んでもらい、その通りの発音を自分でまねして英語でナレーションをつけるという工夫をしています」

インスタグラムのライブ配信はアドリブの英語で行っている。「まだ自由に話せるレベルではない」というが、あえて英語でのライブ配信を続けて自分を追い込んでいるという。

2021年2月27日に公開された「えびフライのつくり方」のワンシーン
YouTubeチャンネル Kimono Momより
2021年2月27日に公開された「えびフライのつくり方」のワンシーン

後編に続く

ベック 知子(べっく・ともこ)
香港在住ライター

民放キー局で15年以上、アメリカの政治家へのインタビューや日米外交に関する取材を行ってきた。2024年にタンザニアに移住しライター活動をスタート。現在は拠点を香港に移し、海外で活躍する日本人をテーマに取材を続けている。著書に『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法』(Kindle版)がある。