配偶者手当を廃止する企業が増えている
また、103万円を超えると、扶養している会社員が「配偶者手当」を受け取れなくなるケースがありました。しかし、2015年以降は配偶者手当自体を廃止する企業が増えており、現状103万円を超えても、手取りが大きく減るケースは少なくなりました。
唯一の例外が、19歳以上23歳未満の子どもが103万円を超えて働く場合です。扶養する子どもの年収が103万円を超えると、親の「特定扶養控除(63万円)」が適用されなくなり、親の税負担が増えます。ただし、2025年度からこの要件が150万円に緩和される見込みです。
年収150万円の壁は、扶養している人の「配偶者特別控除」に関係します。この金額を超えると配偶者特別控除が段階的に減り始め、201万円を超えると、配偶者特別控除の対象外となります。手取りは働いた分だけ増えるものの、扶養している人の税負担が増えるため、世帯での手取りが減る可能性があります。
「社会保険料の壁」には、106万円、130万円の2つがあります。
51人以上の企業に勤める人であれば、年収が約106万円に達すると、社会保険に加入する義務が発生して保険料を支払う必要があります(後述しますが、2026年10月にこの106万円の壁は撤廃される見込みです)。年収130万円以上になると企業規模に関係なく加入することになります。
年収が106万円であれば、厚生年金保険料と健康保険料の合計で年15万円程度の負担が発生します。手取りが1割以上減る、まさに「壁」といえるでしょう。加入前よりも手取りを増やすには年収約125万円になるまで働く必要があります。
社会保険料を納めないのはおトクなのか
では、扶養の範囲内で働き、社会保険料を納めないことは、はたして「おトク」なのでしょうか。
ここで、社会保険に加入するメリットにも触れておきましょう。
当たり前ですが、厚生年金に加入すると、年金額が増えます。では、その年金がどれくらい増えるか、ご存じでしょうか。
たとえば、年収117万円で20年間加入した場合、国民年金だけの場合に比べて、年間約12万円多くなります(年金額は約92万円)。2024年現在、年収117万円の人の厚生年金の保険料は年間9万6624円ですので、20年間で支払う保険料の合計は約194万円。単純に計算すると、17年間以上受け取ると、支払った保険料より多くの年金を受け取れる計算になります(増額分12万円×17年=204万円)(※)。
(※)年金の受給額や保険料は毎年改正されるため、実際の金額は異なります。あくまで目安としてご参照ください。