ペットは婚姻費用の支払いの対象外

このように、A子さんは完全に当てが外れてしまいました。

ペットを大切にかわいがっている人は多いですが、基本的に、ペットは法律上動産として扱われ、扶養家族としてはカウントされません。そのため、婚姻費用の支払いの対象外であり、離婚した場合も養育費の対象になりません。

審判・判決になった場合、ペットは算定の対象から外されるという扱いが一般的です。しかしA子さん夫妻のように、合意の範囲内で、算定の基準額よりも任意で上乗せをして払われる可能性はあります。ペットの養育費として一定額を払う、たまにペットに会うといった合意をしたケースもありました。

ペットは財産分与の対象となる

また、離婚する際、ペットをどちらが引き取るかで揉める場合もあります。上で述べた通り、ペットは動産のため、調停や裁判では親権ではなく、財産分与の問題として扱われます。

夫婦のどちらかが独身時代から飼っていた場合は特有財産となり、財産分与の対象にはなりません。

結婚後に飼い始めた場合は、共有財産となりますが、分けることはできないため、どちらが引き取るかを話し合うことになります。双方が譲らない場合は、現実的に飼育できる可能性のある側が引き取るという判断が下されることがあります。

一方、夫婦のどちらも引き取りを望まないというケースもあります。その場合は引き取り先を探すことになります。

このように、離婚や別居の際にペットがどう扱われるかには、一定のルールがあります。原則はどうなのかを知っておかないと、A子さんのように当てが外れてしまうことがあるため、前もって弁護士に相談をすることをおすすめします。

堀井 亜生(ほりい・あおい)
弁護士

北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。