「親でいようとするほど、自分を追い込むことになる」

実は最初に取材を受けた時期、遺書の準備をしていました。孤立していて、ストレスを人に吐き出しても跳ね返される。どこにも行き場所がなくて死にたいと思っていました。睡眠薬を大量に飲んだこともあったけど、死ねなかった。死に方を探してネットサーフィンしていたときに偶然、あの記事を見つけて投稿フォームに連絡して取材を受けました。取材を受けてからもしばらくは同じような状態だったけど、その後、自分の中で心境の変化がありました。

あのとき取材で話を聞いておきながら、危機を察知せずに何もしなかった自分を恥ずかしく思うと同時に、石川さんが生きていてくれたことに深い感謝の気持ちが込み上げてきた。何が石川さんの心境を変えたのか。それは、番組に登場した母親の言葉だったという。

番組をやるという連絡をもらって見てみたら、出演していたお母さんが「母親をやめてファンになる」と言っているのを聞きました。そのとき、こういう考え方もあるんだって、何かが開けたような気持ちになりました。親でいようとするほど、しっかりしなきゃと思って自分を追い込むことになる。そうならないために、この考え方が自分には合っていると感じました。

周囲から「母親の責任」を絶え間なく問われ続けた美保さんが、番組で母親としての義務ではなく「ファン」のような気持ちで子どもたちと接するようになったことで心が軽くなったと話した姿を見たことが、石川さんの気持ちを大きく変えたという。

「アイドルのマネージャー」が近いかもしれない

そこからヒントを得て、それなら自分はなんだろうって考えました。「ファン」というのは自分と子どもの関係とは違うかなと思って、私は「アイドルのマネージャー」という感じが近いのかもしれないと思いました。私はアイドルのお世話をしているという状況かなって。

それなら夫は事務所の社長で、学校はテレビ局かもしれないと思いました。そうやって置き換えて接するうちに、びっくりするほど気持ちが楽になりました。「ママ」って頼まれると「はい、はい?」ってマネージャーが仕事を片付けるような気持ちでやるようになりました。いずれ子どもが独立して社会という「舞台」に立ったとき困らないようにサポートしているんだって、アイドルをプロデュースするような気持ちです。