台所で日々の食事を作る立ち仕事がしんどくなる

体力があって車を運転し、スマホ操作も難なくこなす若い人たちには、こうした高齢者の苦労など、想像もつかないことだろう。

「買い物なんか、生協やスーパーなどの宅配サービスを利用すればいい」。そう考える人がいるかもしれない。だが、そうしたとして、何を注文したかを忘れ、同じものを何度も注文してしまうこともある。

さらに届いた食材を調理し終えるまでが、またひと苦労。筋力が衰え、調理する短い間でさえ、腰の痛みや膝の痛みで立ち仕事がしんどくなる。手はこわばり、フライパンの重ささえ持てあます。火の消し忘れが怖く、揚げ物料理をするのが怖くなる。……などなど、ここでもさまざまな「面倒」が待ち受ける。

このような難題を抱えながら、80歳を過ぎ、90歳に至っても、食事づくりをはじめとする毎日の家事を担う暮らしの女性たちが多数いる、そうした事実を国の調査も報告している。

80代前半までは買い物も料理も自力で頑張る人が多いが…

まず、「高齢者の健康に関する調査」(内閣府、2022年)で、「食品・日用品の買い物」に関する女性の回答を年齢別に見てみよう。

「食品・日用品の買い物」を「自分でしている」割合は、75~79歳で87.6%と、ほぼ9割を占める。それが、80~84歳では71.4%、85~89歳で37.4%、90~94歳で20.0%と、80歳を境に減少するが、とはいえ80代後半で4割弱、90代前半でも約2割の人が、自分で担い続けている。

さらに、「食事の用意」を「自分でしている」割合を見ると、その割合は「食品.日用品の買い物」よりも多く、75~79歳で89.6%、80~84歳で80.5%と、80代前半までは8割を超える人が担っている。

80代後半になると大きく減少するが、それでも85~89歳では49.6%で約5割、90~94歳では34.0%と約3割の人たちが、「食事の用意」を自分でしている。

【図表1】日常生活での活動状況
出典=内閣府「高齢者の健康に関する調査」2022年