パソコン通信を始めたときは、シニアの女性が…とからかわれた
高校を卒業し、銀行に入社した当初は、そろばんやお札を数えるなどの“手作業”が苦手で、「会社のお荷物」「給料泥棒」とまで自身を卑下し、体調を崩して会社を休むことすらあった若宮さん。しかし、機械という味方を手に入れ、自信を持てるようになり、人に必要とされるようになった。さらに世界最高齢のアプリ開発者として知られるようになると、各地から講演に呼ばれるようになり、80代からの今が最も多忙で、最も輝いているときなのだろう。
だが、電話回線を使ったパソコン通信時代には、パソコンでインターネットを利用していたのは男性ばかりで、なかには、女性で高齢の若宮さんをからかう者もいたと振り返る。
「私には専門知識がないから、パソコンなんか自己流でやっているだけ。でも、別に習得なんかしなくていいし、学問なんかしなくても、使えばいいじゃないですか。何年か経って『若宮さんは、よくあのいじめに耐えていた』なんて言われることもあるけど、別にいじめじゃない。私は常識がないから、とんでもないことをするわけですよ。あの頃は今みたいにアプリの完成度が高くなかったから、例えばアップしてから全部文字化けしちゃっていたとかで、注意されるわけですよ。そうすると、みんなアップしなくなるけど、叱られるからこそ、正しいやり方を覚えるんじゃない? 私は鈍感力がありますから、からかわれたり、いろいろ言われたりしても『気を付けよう』『お月謝も払わないのに、教えてくださってありがたい』と思えるの」
ChatGPTやGoogleのAI「Gemini」と会話して遊ぶ
自己流で進めてきた若宮さんが、今気に入っている仕事兼遊びは、ChatGPTやGoogleのAIチャット「Gemini」だ。学生がレポートで、あるいはビジネスマンが仕事で活用するケースは増えているが、必要に迫られないと、どんな場面で使ったら良いかわからないという人もいるだろう。
このインタビューを行ったのは、衆議院議員選挙の翌日。若宮さんは目の前で、まず「次の総理は誰ですか」と聞き、「私はできるだけ正確に回答するようにトレーニングされています。間違えることがあります」といった答えが出ると、「言い訳していますよ、情けない(笑)」とすかさずツッコんだ。
さらに、若宮さんは独身だが「私の3番目の亭主だった男は今どうしていますか?」と打ち込み、「『個人情報だからアクセスできないです』って」と、キレのあるユーモアを繰り出す。
「AIはお絵かきもできるし、人と会話しているような感覚もありますよ」と、まるで一緒に遊んでいた親しい友人を紹介してくれるようなスタンスだ。