幼児が最初にかかり、軽症だが細菌をまき散らすパターン

これは典型的なパターンで、家庭内で最初の症例となるのは幼児ということが多い。しかも、幼児は軽症で、無症状に近いケースも多いのです。この例の4歳の子のように、これまでマイコプラズマに感染したことがなく免疫がついていない人は、軽症のわりにたくさん細菌をまき散らすことに。そして、家庭にバーッと広がってしまいます。

現実的に考えて、4歳の子の症状があやしいと思っても、ずっとマスクを着けさせるわけにもいきませんよね。もうひとつ、家庭にマイコプラズマが入り込むルートとしては、学童が学校で感染し、家に持ち込むパターンがあります。

娘にマスクをつける母
写真=iStock.com/recep-bg
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そうなると、医師としては申し訳ない気がしますが、二次感染は予防のしようがなく、子どもがかかった時点で、兄弟や親も一蓮托生というか、うつることはある程度覚悟するしかないと思います。

潜伏期間が異常に長く、スローだが確実に感染を広げる

そうして、いったん細菌が家庭に入ると、低い感染率で約30%として、3人家族で1人感染、5人家族で2人感染。高い感染率で80%の場合、3人家族はほぼ全員感染、5人家族で4人感染すると見られています。これはそれぞれの免疫量や健康状態によって変わってきますが、感染力はかなり強い。

さらに潜伏期間が長いので、4人家族が年齢順にかかっていって、一番年上のお父さんが治癒するまで2カ月かかるなんてことも……。スローな感染症と言うべきか、いつまでも終わった感じがしなくて、残念すぎる結果になることもあります。

ただ、症状はそれほど恐れることはありません。感染しても8割の人は風邪かなという程度で自然に治癒しますし、悪化したとしても、マイコプラズマは細菌なので抗生物質(マクロライド系の抗菌薬)が効きます。処方されて、早ければ翌日には熱が下がり、症状が改善していきます。ワクチンはないものの、新型コロナが発生したときや2009年に流行した新型インフルエンザに比べれば、治療法は確立されているのです。

ですから、感染が疑われる場合は、なるべく早めに受診して、薬をもらってください。