女子部の“魔女たち”はスーパー戦隊もののようなイメージで

第1週から第6週までは、既にほぼ解決している差別や分かりやすい差別を扱いました。寅子が明律大法学部で出会ったのは、梅子や華族の涼子など、「家制度」や身分・立場に縛られてきた人たちや、「女性」性が背負うものから逃れたい“よね”、生まれた国が異なる香淑、同性である親友に思いを寄せる轟、のちに法としてのルールと人としての道の乖離かいりに苦しむ花岡など。いろんな家庭環境やいろんな属性、セクシアリティの問題などがありました。

私はアニメーションの脚本を手掛けてきたこともあって、よく「(秘密戦隊)ゴレンジャー」のシステムを思い浮かべるんですね。スーパー戦隊などでよくある、レギュラー5人と、後に加わるホワイトとブラックを含めた7~8人が限度かなという想定で。最初に女子部と花岡、轟を考え、そこに玉ちゃんや優三を含めたくらいの人数ならば、人物一人ひとりを深掘りできると思いました。

一方、寅子の親友でありその兄と結婚する花江は、朝ドラの主人公にもなりうる人物なんですね。法曹界の改革を支えた人とも言えるし、朝ドラの定番の一つである何かを成し遂げた人物を支える奥様ポジションもできると思いました。さらに言えば、寅子と表裏一体の部分もあります。なぜなら、寅子が進む道は誰かがケアをしてくれる道なので、その裏にいるケアする人のことを描きたいと思ったんです。

連続テレビ小説「虎に翼」第25週より、女子部のメンバーが再会した場面
写真提供=NHK
連続テレビ小説「虎に翼」第25週より、女子部のメンバーが再会した場面

主婦として生きる花江、「名誉男性」になりオヤジ化する寅子

朝ドラは、これまでも男性を支える側を多く描いてきました。人物を近くに感じて寄り添いやすい設定だとおもいます。支える側の花江に共感する人も多いですよね。だからこそ、その親友であり義理の妹でもある寅子が年齢を重ね、一家の稼ぎ頭として力を持つようになってきてから、オヤジ化するターンは避けて通れないと思いました。

権力や立場、肩書にあぐらをかいてしまうのは、性別ではなく、その環境や社会構造がさせること。法曹界が裁判官として努力する寅子を認め、“名誉男性”にする中、そのケアをするのは家族です。実際、寅子が花江にしてしまったような扱いを世の中の男たちは妻子にしているわけで、それはたぶん自分の家庭と照らし合わせて、それが普通だと思っているから悪意なくやっちゃうことなんですよね。

でも、それと同じことを女性がやると、それだけでは済まなくなる部分がある。その問題は描かなければいけないなと思ったし、人は絶対間違えるものなので、寅子が間違えるところはぜひ描きたいなと思っていました。