嘉子の実子は男の子、乾太郎には4人の子がいた
ドラマと同じくお互い連れ子がいましたが、乾太郎さんには子どもが4人いて、嘉子さんの実子は女ではなく、男でした。
また、ドラマでは娘・優未(毎田暖乃)が航一さんと良い関係を築いていますが、史実でも、息子の和田芳武さんはけっこうマイペースな人で、乾太郎さんも休日に家でずっと黙々と本を読んでいるようなタイプだったから、芳武さんは「どことなく波長が合って仲良くなった」と話していますね。
物静かな芳武さんと乾太郎さんに対し、嘉子さんは賑やかで正反対のタイプ。その点は寅子と似ているんですが、史実では乾太郎さんの方がむしろ嘉子さんに惚れ込んでいたそうです。名古屋に赴任している期間は、乾太郎さんが名古屋まで嘉子さんに会いに来ていたという話なので、乾太郎さんの方が熱心だったんでしょうね。とはいえ、嘉子さんもイギリス紳士のような乾太郎さんに想われて、うれしかったのだと思います。
実際、好きになったのは乾太郎さんの方からで、嘉子さんの誰にでも分け隔てなく接する感じを気に入っていたようです。ドラマでは、他者に対して溝を作ってしまう航一さんが、懸命に溝を埋めようとする寅子に惹かれますが、そのあたりの関係性は史実のお二人の関係をイメージして吉田さんが描かれたのかもしれません。
「断崖の端に立っているような緊張」が再婚で穏やかに
嘉子さんが自身の再婚について、2年後に短く触れた次のような文章があります。
(清永聡『三淵嘉子と家庭裁判所』日本評論社)
前夫の和田芳夫さんと死別した後、幼い芳武さんの育児や、学業優先だった弟たちの世話が最優先だった嘉子さん。弟もみな社会人になり、芳武さんも中学生になったことで、ようやく自分の幸せをもう一度考えられるようになったのでしょう。
ちなみに、ドラマでは弟・直明(三山凌輝)の発案で、大学時代の仲間たちが集まり、サプライズで「結婚式のようなもの」が行われましたが、史実では双方とも再婚ということで、実弟だった泰夫さんによれば、結婚式は身内だけのごく簡単なものだったそうです。