「売らない」なら妻の稼ぎを増やすしかない

実は今年1月、相続税を低く抑える効果のあった「タワマン節税」が改正されたこともあり、タワマン購入時のメリットが低くなってきている現状があります。加えて、都市部にタワマンが乱立されたことで相対的に価値が落ち、高値で売ることが難しくなってきている話も聞きます。そもそも佐竹さんは新築のため、不動産会社の宣伝費などが加味された「新築プレミアム」代が上乗せされた価格で購入しています。これにより、市場価格の約2割増しとなる新築物件は、売却時に利益を得ることが難しくなるとされています。

そんな状況もあり、佐竹さんに「売る」という選択肢がない以上、物件は維持するしかありません。そのためにすべきは、生活をダウンサイジングして支出を減らすか、収入を増やすかの二択。その中で私が一番におすすめしたのは、「妻の稼ぎを増やすこと」です。

収入アップを考える場合、佐竹さんの転職の可能性や資産運用を見直すといった選択肢もありますが、佐竹さんの妻は年間40万円程度のパートのみなので、まだまだ働ける余地がありそう、というのがもっとも大きな理由です。会社員である佐竹さんの賃金をすぐに上げることは難しくとも、妻のパートの回数を増やすことはすぐにコントロールできる範囲ではないか、ということですね。

佐竹さん自身、昔から妻にもっと働いてもらいたい思いはあったそうで、ファイナンシャルプランナーという専門家の立場から後押ししてほしい部分もあったようです(そのようなご依頼も珍しいことではありません)。御本人は専業主婦希望だそうですが、タワマンに住みたいという家族の意思があるなら、世帯年収を上げるベストな方法を夫婦で話し合っていただきたいと思います。

木製の家とコイン
写真=iStock.com/marchmeena29
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30歳で「自分の年収分」の貯金があるのが理想

また、佐竹さんの現在の貯金額は200万円なのですが、38歳という年齢と現在の年収を考えると、本当なら、1000万円はあってほしいところです。

通常のファイナンシャルプランニングとしては、30歳で自分の年収分の貯金があるのが理想とされています。たとえば毎月の手取りの2割を貯め続けると、5年間で自分の年収分が貯まりますよね。給料1年分が手元にあれば、なにかで仕事を辞めたり、病気や怪我、また臨時の出費があった際にも最低限やりくりができるので、年収分の貯金をまずは目指して、家計管理も頑張ってほしいなと思います。加えて資産運用も強化し、来る金利上昇・修繕積立金の値上げにも耐えられる体制を整える必要があるでしょう。