逆に年金受給を60歳からに繰り上げるとどうなるか
最後に、年金繰り上げについても説明しておきたい。
65歳年金受給を5年繰り上げて60歳からの受給にすると24%減る。これは、1962年4月2日以降生まれの人の場合だ。それより年上の人はもっと減る。
年金は年を取ってからの保険の役割がある。高齢になったときの年金を減らすのはあまり勧められない。
年金24%減の場合の損益分岐点は80.8歳になる。繰り下げの場合と逆で、80.8歳以前に死ねば得だが80.8歳を超えて長生きをすると損になる。長生きのリスクという言葉があるが、長生きをした場合、頼みの綱の年金が減ったままで生活をするのは厳しい。
繰り上げ受給は60歳を超えて年金がなければ生活していけないという状況に追い込まれた場合以外は勧められない、という結論になる。
早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。