年金を繰り下げると家族手当に当たる加給年金がもらえない

加給年金とは、現役時代に会社員または公務員であった第2号被保険者が規定の受給年齢である65歳になった時点で、65歳未満の妻または18歳未満の子がいるときに支給される年金で、いわば、年金の家族手当ということができる。専業主婦家庭なら夫が65歳になって配偶者が65歳になるまでの間、年間40.81万円(2024年4月以降の支給額)もらえるが、厚生年金の繰り下げ期間中はそれがもらえなくなる。

例えば、図表3で示すように、夫と配偶者の年齢の差が10歳の場合で夫が年金を75歳まで繰り下げると本来もらえるはずの10年分の加給年金408.1万円がもらえなくなる。夫と配偶者の年の差が5歳でも204.05万円を失うことになる。

加給年金は夫婦の年齢差・所得などの家庭環境によって違うが、もらえる人はかなり大きな金額をもらえるので、年金繰り下げによって加給年金を失ってしまうのは避けなければならない。

この問題を解決するには厚生年金は繰り下げず、基礎年金のみを繰り下げる方法がある。そうすると加給年金は本来の形でもらうことができる。

ただ、繰り下げられるのは基礎年金だけになるので、繰り下げによる年金増額効果は1/3程度になってしまう。

【図表3】年金を規定通りにもらった場合と75歳まで繰り下げた場合の加給年比較

繰り下げで年金が増えても、そのぶん税金と社会保険料が増加

繰り下げにより年金受給額が増えても、税金および社会保険料の比率が増えるので、手取り額は年金受給額ほど増えない。

税金や社会保険料は他の所得があるかないか、住んでいる地域、年齢によっても異なるので一概には言えないが、図表2「片働き家庭における平均年金受給額」をベースに試算したものが図表4だ。

これはあくまで、イメージを得るための数字くらいに思ってほしいが、それでも、収入ベースでは1.84倍になった年金が、手取りベースでは、1.75倍くらいにしかならないのがわかる。

【図表4】年金繰り下げによる手取り額の変化比較(概算)