いまの日本の経済的地位は“伝統的な勤勉さ”があったから
もちろん、それも正しいです。働き方改革やハラスメントの防止、コンプライアンスの遵守などはとても大事です。でも、いまの日本があるのは、かつて多くの社会人がしていた“伝統的な働き方”があったからだということも、忘れないほうがいいと思うのです。
若い人に合わせて変革しながらも、伝統的な働き方もある程度のバランスで残しておいたほうがいいのではないでしょうか。あまりにも配慮しすぎると、日本の強みである国民の底力が、やがて失われてしまう可能性もあります。
結局のところ社会は厳しいものですし、いまは国際競争も激しい時代です。その中で上を目指そうと思ったら、やはりある程度はがんばらなくてはなりません。これはどこの国でも同じです。
特に日本は、レベルの高い「普通の人」たちががんばって働くことで経済大国になった国です。これは世界的に見てもまれな例で、本当にすばらしいことだと思います。なのに、もし日本人が誰もがんばらなくなったら……。私は「どうした日本!」と思ってしまうでしょう。
私は将来も、ジョージアと日本の人や企業の交流を促進する仕事を続けたいと思っています。長年日本に暮らして、人々の仕事への姿勢やプロフェッショナル精神のすばらしさはよく知っていますから、ぜひ共に働きたいですね。それに日本の歴史や文化も大好きで、いまなお興味は尽きません。
また、ジョージアも日本に勝るとも劣らない素晴らしい文化を持っています。だからこそ両国の交流が意義深いものだと思っています。加えて、私からのささやかな思いですが、日本の皆さんが自分たちの強みや文化の特別さに自信を持ち、今後も世界の中で存在感を発揮し続けていくことを期待しています。
取材・構成=辻村洋子
ジョージア出身。1992年に来日し、その後ジョージア、日本、アメリカ、カナダで教育を受ける。2011年9月に早稲田大学国際教養学部を卒業し、12年4月キッコーマンに入社。退社後はジョージア・日本間の経済活動に携わり、18年ジョージア外務省に入省。19年に在日ジョージア大使館臨時代理大使に就任し、21年より特命全権大使。著書に『大使が語るジョージア 観光・歴史・文化・グルメ』(星海社、共著)など。