2分間の腹式呼吸で涙液量を4倍に

腹式呼吸が、健康面においてさまざまなメリットがあるのをご存知の方も多いと思います。

実は、腹式呼吸は目にもメリット大。

腹式呼吸を3分間行なうと、15分後に涙の量が50%増えたという研究結果があります。

腹式呼吸とは、鼻から大きく息を吸ってお腹をふくらませ、口から大きく息を吐いてお腹をへこませる、長くて深い呼吸です。

立ってお腹に手を当てる人と内臓の位置のイメージ
写真=iStock.com/mi-viri
※写真はイメージです

腹式呼吸をすると副交感神経が優位に働いて、涙の量が増えるのです。

この実験では、参加者20名の平均の涙の量が、2.7mmから4.0mm(試験紙による測定値)に増えたそうです。

私もこの実験にならって、「鼻から4秒間息を吸い、口から6秒間息を吐く腹式呼吸を3分間」試したところ、涙の量が0mmから4mmに増えました。

ただ、正直なところ3分間の腹式呼吸は「長い」と感じます。そこで私は、2分間、まったく同一のやり方で腹式呼吸を行なってみたところ、ほぼ同等の数値を得られました。

ですから、働き盛りのみなさんにも、心理的なハードルがより低い「2分間の腹式呼吸」をおすすめします。あわただしい日々でも、気づいたときにぜひ、腹式呼吸をしてみてください。涙の量が増えるだけでなく気持ちも落ち着いて、パフォーマンスも上がることでしょう。

これらを毎日の生活習慣にして目にうるおいを与えれば、視力は大人になってからでも変わります。自分の目の自己回復力を信じて、ぜひ、視力防衛習慣を続けてみてください。

構成=鈴木裕子

綾木 雅彦(あやき・まさひこ)
眼科専門医・慶應義塾大学医学部非常勤講師

1982年、慶應義塾大学医学部卒業。1994~1997年、ハーバード大学に留学(医学部研究フェロー)。昭和大学医学部眼科准教授、国立病院機構埼玉病院眼科医長、国際医療福祉大学三田病院眼科准教授などを歴任。慶應義塾大学眼科学教室の研究者として知見を深めながら後進の指導にあたるほか、日本抗加齢医学会評議員などの要職も数多く務める。「ブルーライト研究の第一人者」としても知られる。著書に『視力防衛生活』(サンマーク出版)など。