目の自己回復力を高めてくれる生活習慣は何か。眼科医の綾木雅彦さんは「目を最適にうるおすのは自分の涙が一番。きれいな涙液を増やす生活習慣を日頃から身につけるといい」という――。
仕事で疲れた目を抑えるビジネスマン
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「あいう・まばたき」&「い・まばたき」で涙液量アップ

前回に続き、今回はビジネスパーソンに向けた視力防衛習慣についてご紹介します。

上まぶたと下まぶたを、しっかりとくっつける。そうすることで、刺激を受けた涙腺から涙液(涙)が出て、古い涙と新しい涙の交換が行なわれ、目にとって理想的な状態をキープできる。それが、「完全まばたき」の効果です。

実は、完全まばたきの効果をさらに上げるコツがあります。

あくびをすると、目に涙がにじんできませんか? これは、顔の表面が大きく動くことで起きる現象です。この仕組みを利用して、涙の量を簡単に増やすことができるのです。

完全まばたきを行なう前に、「あ・い・う」の形に口を大きく動かし、「擬似あくび」をしてから完全まばたきをしてみてください。

いかがでしょう。顔の筋肉が大きく動くことで、涙腺や涙の保管庫である「涙囊るいのう」が圧迫され、涙が搾り出されるように、通常よりも多く産出されるはずです。

実験の結果、とくに「い」の口は涙の量を増やすことがわかりました。そこで、「あいう・まばたき」の簡易版として「い・まばたき」を、忙しいビジネスパーソンの方々にはおすすめします。

目のかゆみには「ぱっちんまばたき」

花粉症の季節など、目がかゆくなると思わず目をこすってしまう人も多いのではないでしょうか。

しかし、目のかゆみというのは皮膚のかゆみと同様、かけばかくほど、かゆくなります。

その原因は、細胞から分泌されるヒスタミンというかゆみ物質。かくほどにヒスタミンが分泌されてかゆみ増してしまうのです。目に異物が入っている場合は、かくことで角膜を傷つけることにもなりかねません。

したがって、かゆみを止めるためには、かかないこと。

その代わりに、まばたきをしましょう。まばたきで、異物やごみを目から洗い流すだけでも、症状はかなりおさまります。

おすすめは、「ぱっちんまばたき」。上下のまぶたを強くくっつけることを意識しながら、連続して5回ほど、しっかりとまばたきしてください。

「ぱっちん」なんて名前の響きはとぼけていますが、効果は絶大。完全まばたきよりも、よりうるおいを感じられるはずです。

涙が分泌されたら、ティッシュでやさしく拭き取ります。かゆみのもとである異物やごみは両目の目頭や目尻にたまるので、取り去ってください。

目元クレンジング剤で「ヨコ洗顔」

目の健康のためには、まぶたのキワを洗うこともとても重要です。

まぶたのキワには、涙に油分を供給する皮脂腺「マイボーム腺」があります。

マイボーム腺から分泌された油分は、涙の表面を覆って過剰な蒸発を防ぎ、目のうるおいを保ってくれますが、まぶたのキワに汚れが溜まるとマイボーム腺が詰まって涙が乾きやすくなり、ドライアイや結膜炎など、厄介な問題を引き起こす危険性があるのです。

そんなまぶたのキワは、洗顔時のひと工夫できれいに洗うことができます。

両まぶたを閉じた状態で、人さし指と中指をそろえてまぶたの上に置き、左右の方向に10回往復。まぶた上で指をヨコに動かすことから、私はこれを「ヨコ洗顔」と名付けました。

ヨコ洗顔の際、目もと専用の「アイシャンプー」を使うと、より効果的。

アイシャンプーは涙に近い弱アルカリ性で、涙と同等の塩分濃度、保湿成分のヒアルロン酸、抗炎症成分が配合された目元クレンジング剤です。清涼感のあるメントール配合タイプや、まつ毛美容成分配合タイプもありますので、試してみてはいかがでしょう。

「目シャワー」を入浴時の習慣に

なお、ヨコ洗顔は、シャワーでお湯を浴びながら行なうと、より効果的です。

落ちる水とシャワーヘッド
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浴室内の湿気によって目が自然にうるおった後、閉じたまぶたの上にシャワーでお湯をかけながらやってみましょう。シャワーの適度な水圧による刺激も手伝って、まぶたの中の油を効率よく溶かして流せます。

シャワーの湯温は40度以下、時間は30秒〜1分程度。シャワーに水圧を借りながらヨコ洗顔を行なうこの方法を、私は「目シャワー」と呼んでいます。

年齢を重ねるほど、目の汚れはまぶたにこびりつきがちです。入浴時に、目元クレンジング剤でヨコ洗顔と目シャワー。そして朝の洗顔時もとくに、まぶたのキワの洗浄を意識してみてください。

注意することは、ヨコ洗顔、目シャワーともに、目元クレンジング剤が目の中に入らないようにすること。また、眼球を強く押さないようにやさしく行ないましょう。

水で目を洗うのは要注意

目がかゆいとき、水道水で目を洗っていませんか。

水道の蛇口から出た水でジャバジャバと目を洗うと、スッキリしたような感じがするかもしれませんが、実は、目のためにはよくありません。

目の表面の層は、油層、水層、ムチン層の3層に自ずと整う仕組みになっているのですが、そこに水道水を加えると、せっかくの秩序が乱れて涙の質が落ちてしまいます。

水洗いで、目に入ったごみや異物を取り除けたとしても、目の表面の保護機能が破壊される危険性が大きいのです。

健康のために水泳をしている方は、とくに注意が必要です。

日本眼科医会は2008年から、水泳後の洗眼とゴーグル使用について、次のような見解を出しています。

「プールではゴーグル使用が望ましい。また、プール後の水道水による簡単な洗眼は行なってよいが、積極的に推奨するものではない」

慶應義塾大学の実験では、プールの水や水道水に含まれる塩素によって目の表面のムチンが有意に減少し、角膜上皮(黒目の最表面)のバリア機能が障害されることが明らかになりました。

目によいのは、自分の涙。自分の涙液でうるおすのがベストです。

そして応急処置として異物を取り除く以外は、まばたきが一番なのです。

「目ほぐし」で老眼や眼精疲労予防

老眼の発症時期や進み具合を遅らせる方法として、「目ほぐし」があります。

目ほぐしとは、近くと遠く、つまり目のピントの位置を変えることで毛様体筋を自力で伸び縮みさせ、ピントの調整力を鍛えるというものです。

やり方は、とても簡単。まず、利き手の人さし指を目から約30cmのところに置き、指先を1〜2秒間見る。次に、6m以上遠くを1〜2秒見る。これを交互に20回、行なうだけです。

目ほぐしの効果は、2021年の慶應義塾大学の実験によって、「40〜58歳の人の老眼症状を軽減する効果あり」と実証されました。60代以上でも、効果は期待できます。

さらに、20〜30代の人にとっても、目の疲れをほぐす「目のストレッチ」になります。

私たちは、長時間の手元の作業などで毛様体筋を酷使しています。この目ほぐしを行なうことで、毛様体筋の凝りや疲労を軽減し、眼精疲労を遠ざけることができるのです。

眼精疲労は、慢性的な頭痛や肩こりのモトになりますので、目ほぐしを行なってこまめに疲れを解消しましょう。

なお、指を使わなくても目ほぐしは可能です。

たとえば通勤中、電車の中で「近く」と「窓の外の風景」を交互に見ることでも目をほぐせます。ぜひ、お試しください。

外の風景が見える列車内
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2分間の腹式呼吸で涙液量を4倍に

腹式呼吸が、健康面においてさまざまなメリットがあるのをご存知の方も多いと思います。

実は、腹式呼吸は目にもメリット大。

腹式呼吸を3分間行なうと、15分後に涙の量が50%増えたという研究結果があります。

腹式呼吸とは、鼻から大きく息を吸ってお腹をふくらませ、口から大きく息を吐いてお腹をへこませる、長くて深い呼吸です。

立ってお腹に手を当てる人と内臓の位置のイメージ
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腹式呼吸をすると副交感神経が優位に働いて、涙の量が増えるのです。

この実験では、参加者20名の平均の涙の量が、2.7mmから4.0mm(試験紙による測定値)に増えたそうです。

私もこの実験にならって、「鼻から4秒間息を吸い、口から6秒間息を吐く腹式呼吸を3分間」試したところ、涙の量が0mmから4mmに増えました。

ただ、正直なところ3分間の腹式呼吸は「長い」と感じます。そこで私は、2分間、まったく同一のやり方で腹式呼吸を行なってみたところ、ほぼ同等の数値を得られました。

ですから、働き盛りのみなさんにも、心理的なハードルがより低い「2分間の腹式呼吸」をおすすめします。あわただしい日々でも、気づいたときにぜひ、腹式呼吸をしてみてください。涙の量が増えるだけでなく気持ちも落ち着いて、パフォーマンスも上がることでしょう。

これらを毎日の生活習慣にして目にうるおいを与えれば、視力は大人になってからでも変わります。自分の目の自己回復力を信じて、ぜひ、視力防衛習慣を続けてみてください。