ファイナンシャル・プランナーをもつ利点

定年後は夫婦の形も変わる時期です。夫が会社を辞めて妻が働く、もしくは結婚自体を解消するようなこともあるかもしれません。自分たちのリアルなライフプランに合わせた金銭設計を望むなら、ファイナンシャル・プランナーの方に有料で相談するのもおすすめです。

私自身も、子どもが生まれたタイミングでファイナンシャル・プランナーに相談に行き、保険の見直しや住宅ローンの組み方、家計の設計など、的確にアドバイスしていただきました。

特によかったのは、保険の見直しです。20歳ぐらいから入っている保険を解約すべきかどうか悩んでいましたが、プランナーの方から「とてもよくできている保険だから、これは解約しなくてもいいよ」と言われて、さすがプロだなと。

金銭面についてはなかなか他人に言えないものですが、包み隠さず相談できる相手がいるのは重要なことです。なにしろそれが、お金についてストレスフリーな生活を実現させてくれますから。自分のファイナンシャル・プランナーをもつことで、想像以上に毎日の不安や心配が解消されました。

投資リターンが高いのは自己投資

老後の働き方に、話を戻しましょう。

定年後は会社と業務委託契約をすることはおすすめですが、とはいえ65歳以降は会社が契約してくれない可能性があります。たとえ契約をしてくれても、その金額が非常に安く、収入が10分の1に激減することも……。

そうなったときに重要なのは、フリーランス的に働けることです。40代、50代の人は、今のうちから、いろいろな人と友だちになり、仕事につながる人間関係をつくっておくとよいでしょう。私も自分自身に言い聞かせています。

たとえば、パーソナルトレーナーや鍼灸師、美容師、マッサージ師など、「BtoC(business-to-consumer)」かつ資格が必要な人たちの多くは、個人事業主として活動しています。ほかにも看護師さんやドクター、ハンドメイドで小物をつくるクリエイター、デザイナー、ライターといった人たちも、フリーランスとして働く人が多くいます。

ですから、今のうちから自分の専門性を磨き、好きなことで活躍できるフィールドを耕しておきましょう。大事なのは、自分の好きなことを選ぶこと。飽きずに続けられ、しかも苦にならないことを選ぶこと。そういうことに自己投資したほうが、投資リターンは絶対にいい。経験上、私も強く実感しています。

文書を書く高齢者
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

構成=池田純子

崔 真淑(さい・ますみ)
エコノミスト

2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。2016年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。一橋大学大学院博士後期課程在籍中。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後は、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)でアナリストとして資本市場分析に携わる。債券トレーダーを経験したのち、2012年に独立。著書に『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』(大和書房)などがある。