「1期でやめてしまう若い女性議員も多いのが現実」

ネットを通じて、全国的な応援団が出てくるような変化も起きている。田中氏のために抗議文の取りまとめをしたのがきっかけで、有志の地方議員約百人がメンバーの「議会の多様性を模索する会」ができた。通称「たもさく」。ほとんどが現職の市議や町村議で、一部に元議員や支援者もいる。シンポジウムを開いて情報交換をしたり、愚痴を言ったり慰め合ったりする場としても機能している。「担ぎ上げられて当選しても、後は自分で頑張れ、と放り出されるケースもある。1期でやめてしまう若い女性議員も多いのが現実」と田中氏は言う。

「国会はテレビで映るけど、一番身近な自分の町の議会の情報は少ない。自分から情報を取りに行かないとわからない。メディアの無関心もあり、議会の中身が知られていない」と田中氏。末吉氏は「議会はいらない、議員は多すぎる、といった議会不要論、議員不要論がある。そうした市民の批判に耐えるためには、議会と議員のレベルを上げていかなければならない」と話す。

野田氏は「議会に自浄能力がない場合がある。だから市民による外圧、『市民力』が必要。裁判所も、議会の自律性を尊重すると言って司法判断を避けているけど、これでは議会の内部で閉ざされたものが外に出てこない。もっと議会の見える化が必要」と語る。市民やメディア、司法が外から働きかけないと、地方議会は変わっていかない現状がある。

柴田 優呼(しばた・ゆうこ)
アカデミック・ジャーナリスト

コーネル大学Ph. D.。90年代前半まで全国紙記者。以後海外に住み、米国、NZ、豪州で大学教員を務め、コロナ前に帰国。日本記者クラブ会員。香港、台湾、シンガポール、フィリピン、英国などにも居住経験あり。『プロデュースされた〈被爆者〉たち』(岩波書店)、『Producing Hiroshima and Nagasaki』(University of Hawaii Press)、『“ヒロシマ・ナガサキ” 被爆神話を解体する』(作品社)など、学術及びジャーナリスティックな分野で、英語と日本語の著作物を出版。