相手の話を受け止めて反省・努力することが必要

離婚を切り出されたことで、「自分が悪者にされている」と思うあまり、「相手が悪いと証明すれば離婚しないで済む」と考えてしまうようです。そういった心理から、A子さんの夫のように、延々と相手を責めるようになってしまうのでしょう。

修復したいのであれば、まずは相手の言っていることを聞いて、その内容を受け止めて、反省をしたり、改善しようと努力したりする必要があります。

怒鳴られて怖かったと言ったのに、「それは受け止める方に問題がある」と反論されて、「では自分に問題があるから家に帰ろう」と思う人はいません。むしろ、自分を顧みず上から相手をやり込める態度そのものが、結婚生活を続けられないと思われた原因になっているので、円満調停という名のもとに相手を批判しても、何も変わっていないのだと思われてしまいます。

離婚を求められて修復を希望する場合は、「自分は悪くないのに」という考えだけで行動するのはやめましょう。自分では感情的になってしまい冷静に話し合いができない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

「円満」「修復」の言葉の裏にあるもの

一方で、「離婚を切り出したものの、相手に修復したいと言われて悩んでいる」という人の中には、実は相手からは「悪いのはそちらの方で、自分は悪くないから離婚しない」と責められているだけということがあります。

客観的に見ると修復や仲直りとは程遠い内容でも、「修復したい」という方向性で言われていると思うと、つい決意が揺らいでしまうようです。

ここまで解説してきたように、円満・修復という言葉の裏には、相手に寄り添ってやり直したいのではなく、自分が悪者になりたくないあまり離婚を何としても拒否したいという思いがある場合が多いです。修復という名目だけではなく、相手の言っている内容や態度、背景事情などを見て、やり直せそうかを冷静に判断するようにしましょう。

堀井 亜生(ほりい・あおい)
弁護士

北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。