属性が違う女性同士の友情が描かれる物語
「セクシー田中さん」は、同じ会社に勤めてはいるが、年齢も外見もモテ度も真逆の女性2人、田中さんと朱里が友情を結び助け合っていくシスターフッドの物語である。
田中さんには他人とのコミュニケーションがうまくできず、アラフォーになるまで友達も恋人もいない人生を送ってきたという後ろ向きの面があった。23歳の朱里はかわいらしい外見で男性からモテまくってきたが、家庭の経済的事情から短大に進み、就活もうまくいかずに派遣社員で給料が低く、安定を求めて婚活に走っていた。そんな朱里が、自分の殻を突き破ってベリーダンスを踊っている田中さんを見かけて強くあこがれ、そこから属性を超えた友情が育まれる。
そんな物語をディテールまでこだわり抜いて描いていた芦原氏にとって、同じ女性であり同じクリエイターである脚本家へのバッシングを引き起こし、間接的に「攻撃する」形になったのは、自分のモットーに反し、生き方の根幹に関わることだったのではないだろうか。その絶望は、周囲の人が想像するよりもずっと深かったのかもしれない。「ごめんなさい。」と最後に謝っていることに、芦原氏の誠実な、誠実すぎるほどの思いを感じる。
小学館も日テレもクリエイターを守り切れなかった
そして、ドラマ制作中、小学館は原作者を、日本テレビは脚本家を守っていたのに、結果的には守り切れなかった。脚本家は、芦原氏が「アンサー」を公表するまで原作からの改変なしの要望がそれほど強かったとは認識していなかったと説明しており、受けたダメージも相当大きいと推察される。日本テレビが、ちゃんとそのケアをしているかも心配だ。
どうして守り切れなかったのかという原因については、テレビ業界の構造的な問題と、出版社も含めたヒットを求める利益優先の論理が作用したことが報告書から読み取れる。それについては、また機会があったら書いてみたい。
1995年、出版社に入社し、アイドル誌の編集部などで働く。フリーランスになってからも別名で芸能人のインタビューを多数手がけ、アイドル・俳優の写真集なども担当している。「リアルサウンド映画部」などに寄稿。