3つの循環を意識する

「質問やリアクションが大事なのはわかっているのですが……。それでもなかなか会話が弾まないです……」という方もいます。

その理由は明確です。

ひとつずつを単体で捉えているからです。

さきほど「3つの循環を意識する」と言いました。

ここが雑談の核です。3つがつながっているからこそ会話が発展します。

さきほどの先輩との会話の続きです。

質問「ちなみに先輩って仕事を断ることはないんですか?」
リアクション「ないんですか!」
フィードバック「ときどき先輩の体が心配になりますよ(笑)」

質問「休みとかはちゃんと取っているんですか?」
リアクション「しっかり取っているんですね!」
フィードバック「そういうところ私も見習わないと」

質問「ところでどうやって休みを確保されているんですか?」

というふうに、「Q質問→Rリアクション→Fフィードバック」をぐるぐる循環させるとスパイラル上に会話が広がっていきます。

質問「やっぱり山梨といえば富士山に登る人が多いんですか?」
リアクション「えっ! 地元の人はあまり登らないんですか!」
フィードバック「私、登山が趣味なんで一度は登ってみたいんです」

質問「○○さんも何かハマっていることとかあるんですか?」
リアクション「ゴルフをはじめたんですか!」
フィードバック「いいな~、いずれ私もやってみたいと思っていたんです」

質問「やっぱり最初はゴルフの打ちっぱなしからはじめるのがいいですか?」

という感じでQ→R→Fで会話を波及させていきます。

人は誰でも自分のことをわかってほしい

人は自分の話をさせてくれる人に好意を抱きます。

桐生稔『提案・指示・交渉・雑談・プレゼン・会議etc. あえて話さない戦略』(大和出版)
桐生稔『提案・指示・交渉・雑談・プレゼン・会議etc. あえて話さない戦略』(大和出版)

誰だって自分のことをわかってほしいし、理解してほしいからです。

だからこそ一流のコミュニケーターは、相手から会話を引き出し、相手に気持ちよく話してもらい、ちょっとした雑談の場ですら、楽しい空間を演出します。

常に軸を相手に置いています。

改めて思います。

良質な人間関係の極意は相手がしてほしいことをすることだと。

あえてしゃべらず相手から会話を引き出す
桐生 稔(きりゅう・みのる)
モチベーション&コミュニケーション代表取締役

1978年生まれ。新潟県出身。2017年、「伝わる話し方」を教育する株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)、『雑談の一流、二流、三流』、『質問の一流、二流、三流』(ともに明日香出版社)がある。