ドラマ「虎に翼」(NHK)で注目された俳優の仲野太賀。2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」に豊臣秀長役で主演することも決まっている。作家の濱田浩一郎さんは「秀長は寛大な性格で人望があり、城いっぱいに金銀を蓄えていた。もし長生きすれば、秀吉死後も豊臣政権の重鎮として、徳川家康に勝手なことはさせなかったのでは」という――。
豊臣秀長像
豊臣秀長像(画像=春岳院所蔵品/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

待望の戦国大河「豊臣兄弟!」は、秀吉を支えた弟の物語

平安時代を舞台にした大河ドラマ「光る君へ」(NHK)が放送中です。2025年の大河は江戸後期を舞台にした「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺つたじゅうえいがのゆめばなし~」ですが、その翌年、2026年のNHK大河ドラマは「豊臣兄弟!」に決定しました。天下人となった豊臣秀吉の弟・秀長が初めて大河ドラマの主人公となり、秀長は仲野太賀さんが演じます。

秀吉は言うまでもなく「戦国三英傑」(織田信長・豊臣秀吉・徳川家康)の1人であり、これまで時代劇や歴史小説などにおいて、主役として沢山描かれてきました。もちろん、秀長もそういったものに登場することはありましたが「脇役」扱いだったのです。とは言え、単なる脇役ではなく、有能な人物として描いたドラマもありました。

1981年に放送され、最近、再放送もされていた大河ドラマ「おんな太閤記」。本ドラマの主人公は秀吉(西田敏行)の正室ねね(佐久間良子)ですが、秀長を中村雅俊さんが演じていました。政務や軍事で辣腕を振るい、かつ豊臣家の良心とでも言うべき存在で、兄・秀吉の抑え役にもなる秀長。秀長はドラマにおいては、そういう役どころで描かれることが多く、1996年放送の大河ドラマ「秀吉」では、高嶋政伸さんが秀長を演じ、時に暴走する秀吉(竹中直人)を助ける「名補佐役」として存在感を示していました。昨年放送の大河「どうする家康」で登場した秀長(佐藤隆太)もそうした描かれ方でした。

「秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった」

再来年の大河「豊臣兄弟!」で秀長を演じるのは、朝ドラ「虎に翼」で主人公・寅子の夫を演じている仲野太賀さん。「秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だったとまで言わしめた天下一の補佐役・秀長の目線で戦国時代をダイナミックに描く波乱万丈のエンターテインメント」(2026年 大河ドラマ「豊臣兄弟!」主人公・豊臣秀長役は仲野太賀さん!、NHK、2024年3月15日)とNHK発表の記事にありますので、おそらく、これまでの秀長像を踏襲したものとなるのでしょう。

ドラマにおいて「名補佐役」として描かれてきた秀長ですが、実際にはどのような人物だったのでしょうか。兄・秀吉に関する史料は豊富にあるのですが、秀長に関しては多くはなく、不明な点、議論がある点もたくさんあるのです。例えば秀吉と秀長は同じ父のもとに生まれたのか否かということ。

秀吉は天文6年(1537)2月6日に生まれたという説が現在は有力ですが(天文5年説もあり)、その父は弥右衛門と言われています。弥右衛門は尾張国中村の百姓であったが、織田信秀(信長の父)に動員されて合戦に参加、負傷したと考えられています(ちなみに秀吉の母はなか、後の大政所です)。