離婚した場合の年金はどうなるか

公的年金制度にも関心をもっておくことが大切です。

公的年金は2階建てになっており、加入者全員がもらえる「基礎部分(国民年金)」と、会社員や公務員など給料で働く厚生年金加入者がもらえる「厚生年金部分(報酬比例部分)」に大きく分けられます。自営業者やフリーランスなどは基礎部分だけに加入する「第1号被保険者」、厚生年金加入者は「第2号被保険者」、要件を満たした厚生年金加入者の配偶者は「第3号被保険者」というかたちで、国民年金の加入者となっています。

現在は、共働き世帯の割合のほうが専業主婦世帯より高くなっていますが、フルタイム勤務より、働く時間を調整しながら第3号被保険者として働く人が多いのが実情です。第3号の期間が長い女性や、夫が第1号被保険者の妻が離婚した場合、自身の公的年金は基礎部分しかないことに留意すべきでしょう。

ただし、「3号分割」という制度があり、2008年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間については、相手方の厚生年金記録(厚生年金額の計算の基となる標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ分割することができます。

たとえば、離婚時に2008年4月1日以降の婚姻期間が15年、その間の第3号被保険者期間が10年あったというケースの場合、その10年間については夫の厚生年金記録の半分を妻の年金記録として移し替えることができ、妻の将来の年金額が基礎年金にプラスして増えるということです。

たまに「夫の年金の半分がもらえる」と誤解している方がいますが、そんなに多くはありません。とはいえ、婚姻期間中の分だけであっても、別れた夫の厚生年金記録の半分がもらえるというのは老後の助けになるはずです。

2年以内に分割請求を

注意したいのは、離婚した日の翌日から2年以内に分割請求しないと分割してもらえないこと。夫の合意は必要ないので、妻が年金事務所に必要書類を提出すればOKです。

なお、離婚時の年金分割には「合意分割」もあります。2008年3月以前の婚姻期間中にも第3号被保険者の期間があるケースや、第2号被保険者だけど夫の厚生年金記録よりずっと少ないといったケースは、双方の合意または裁判手続きにより、半分ずつなど按分割合を決めることができます。こちらは婚姻期間全体の年金記録が対象という点に要注目です。やはり、離婚した日の翌日から2年以内に請求手続きをする必要があります。

分割するといえば、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産については、離婚時に公平に分けることとされています。

とはいえ、年金分割や財産分与もすんなり話がまとまらないかもしれません。弁護士など法律の専門家の知恵が必要なこともあるので、自治体の法律相談や地域の弁護士会の電話相談など、利用できそうな相談先を見つけておきましょう。

1万円札、年金手帳と砂時計
写真=iStock.com/itasun
※写真はイメージです