国や社会の意思決定層へアプローチを
【海老原】この50年、日本の社会はあまり変わってきませんでした。
最近は企業も女性が就労継続しやすい制度をつくるなどして変わり始めてはいますが、働く女性にとって仕事と出産・育児の両立負担はまだまだ大きい。少子化もその結果ではないでしょうか。
【上野】少子化は今でこそ「国難」といわれていますが、国は40年も前からこの状況を十分に予測できていたはずです。人口予測ほど予測可能な統計はありませんから。なのに、政治はまったく無為無策でここまできた。そのツケを全部払わされているのが女性です。その結果が少子化でしょう。
【海老原】働く女性に関する問題を解決すべく、国には早急に新たな子育て策などを主導してもらいたいものですね。
【上野】そうですね。そのためにも、海老原さんには国や社会の意思決定層である男性たちに向けて提言をお願いしたいと思います。私たちが男性に言ってもなかなか届かないので。
【海老原】よくわかりました。僕も引き続き取り組んでいきます。
構成=辻村洋子
1948年富山県生まれ。京都大学大学院修了、社会学博士。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で40年間、教育と研究に従事。女性学・ジェンダー研究のパイオニア。
1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。ヒューマネージ顧問。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。