女性の課長昇進率が男性より高い理由

【上野】課長への昇進率が男性より高いのは、総合職採用時の競争率が女性のほうが格段に高いからでしょう。つまり、企業は採用時点で超ハイスペックの女性を選び抜いているのです。女性課長は徐々に増えてはいますが、現在の新入社員の女性比率がそのまま10年後、20年後の管理職比率に反映されるであろうというのは、かなり楽観的な予測だと思います。たしかに就労継続期間は延びていますが、それが昇進と連動していませんし、離職する女性もいます。

【海老原】確かにおっしゃる通り、2000~2005年の大卒正社員新卒入社者を雇用動向調査から調べると、女性2:男性8でした。この女性2のうち、一般職が半数程度いたでしょうから、実際は1:9だったでしょう。それくらい女性は狭き門で精鋭が入っていた。それが、2010年代になると、45:55とほぼ同数にまでなっています。その分、質は落ちているのは確かでしょうが、なにせ、数が大きく増えている。だから僕は期待をしているんです。

企業は「正規・非正規問題」に取り組むべき

【上野】現在の女性課長の割合がさらに部長や役員の女性比率へと順調に経年変化していけばいいですが、現状では女性役員がいてもそのほとんどが社外取締役。社内で人材育成できなかったことを告白しているようなものです。企業の中には社内で登用したくても人材がいない、というところもあります。つまり育ててこなかったということでしょう。口にするだけ恥ずかしいとは思わないのでしょうか。

それに、ここまでは正社員の話でしたが、現実的には女性の就労人口の過半数は非正規雇用です。正社員の第1子出産離職率は5人に1人くらいに低下していますが、非正規女性の第1子出産後の離職率は近年でも60%となっており、同じ女性でも正社員と非正規の間に大きな分断があります。企業はこの点にも取り組むべきです。

【図表3】正社員/非正規社員の第1子出産後の就業継続
※国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2021年)より