「子どもがいない人のほうが幸せ」なのはなぜなのか。アメリカに住む、作家で歴史学者のペギー・オドネル・ヘフィントンさんは「数々の調査によって、子どものいない人のほうが親になった人よりも幸せであることが、アメリカや多くの先進国で示されてきた。しかし問題は子どもたちではない。親が子育てをしなければならない社会が問題なのだ」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、ペギー・オドネル・ヘフィントン『それでも母親になるべきですか』(新潮社)の一部を再編集したものです。 

手をつないで歩く3人の家族
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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「子どものいない人のほうが幸せ」

ノルウェーの社会学者トーマス・ハンセンは、子どものいない人についての主な3つのステレオタイプ(彼はこれを「フォーク・セオリー(民俗理論)」と呼んでいる)には、論理的欠陥があると指摘している。

①子どもは人を幸せにする、つまり子どものいない人は親になった人より幸せではない。
②子どものいない人は孤独で虚しい人生を送る、つまり親になった人より幸せではない。
③子どものいない人は、子育てよりも、楽しみや自由や友人との時間、恋愛、おいしい食べ物、いい家、旅行などを優先させた。

3つ目のステレオタイプは、「かなり幸せなグループであることを示唆しているようだ」と、彼は辛辣しんらつにコメントしている。

少なくとも30年以上前から、数々の調査によって、子どものいない人のほうが親になった人よりも幸せであることが、アメリカや多くの先進国で示されてきた。

最近の研究では、親の幸福度が低いのは、子どもが幼く、時間と労力とお金の要求が最も高いときだけ(であれば理にかなっているのだが)ではないことがわかっている。また、アメリカの子どもが巣立った世代は、子どもがいないシニア世代よりも幸福度が低いと報告されている。アメリカの成人を調査した結果、どのタイプの親であっても――親権を持つか持たないか、実子か養子か継子か、子どもが幼いか成人したかにかかわらず――親でない人よりも幸福度が低いことがわかった。

アメリカでは、親は子どものいない人に比べて12%幸福度が低いと報告されている。

これは先進国の中で、親とそうではない人の間の幸福度の差が最も大きいという数字である。

子ども自身のせいではない

はっきりさせておきたいが、これは子ども自身のせいではない。疲れるかもしれないが、子どもは、喜びと好奇心にあふれ、愛らしくエネルギッシュで、私たちの未来の象徴であり、今を活気づけてくれる存在だ。親は子育てをすることで、目的や満足感、アイデンティティ、有意義な社会的関係が得られると信じている。

親は、そうでない人に比べて幸福度が低いかもしれないが、別の複数の研究から、子どもを持つ人のほうが、目的や意義の感覚が強く、人生に満足していることが示唆されている。

問題は子どもたちではない。親が子育てをしなければならない社会が問題なのだ。