「起きろブス! 盛りのついたメスゴリラ!」

80年代というシチュエーションを借りた“不適切”を切り取る絶妙なバランス感覚。なにせ、ドラマ初回の冒頭のセリフがいきなり「おい! 起きろブス! 盛りのついたメスゴリラ!」だ。

体育教師の市郎は自宅でも教室でも校長室でもバスの中でも、どこに行ってもタバコをふかし(したがってどこにでも灰皿があり)、野球部顧問として千本ノックで部員を大笑いしながらシゴき、「おい、水なんか飲むな! すぐバテるだろ!」と怒鳴り散らし、「連帯責任だ、並べ!」とケツバットをお見舞いする。

昭和の積み木くずしや、今じゃ恥ずかしいくらいのツッパリ文化。「テレビでおっぱいが見たいんだ!」「チョメチョメする気か!」「昭和に帰って“トゥナイト”見た~い」「10代のうちに遊びまくってクラリオンガールになるんだよ!」など、約40年前のノスタルジーをたっぷり含んでためらいなくシモに転ぶ、愛すべきセリフの数々。

視聴者は、クドカンがあえて切り取って見せる「80年代らしい無邪気」をこの2024年に目にして、「懐かしいな〜、こんな感じだったよな〜」と笑いながらも、一方でこれに「でもこれ、ドラマに上手に乗せるの大変だったよね」と一筋のヤバみを感じられるほどには令和ナイズされている自分を知るのである。

お断りテロップの中和作用

市郎が80年代体育教師の感覚で繰り出すセリフは、令和の現代においてはほぼ“不適切”。だがそんな劇中表現に備えてあらかじめ、冒頭でも紹介した注意喚起の「お断りテロップ」が表示されるのが、いわばツッコミの役割を果たしている。

「当時の表現をあえて使用して放送します」
「あくまで昭和における個人の価値観です」

わかっていてあえてやっているんです、言わせているんです。だからそれを楽しんで見てね。このテロップの存在によって、令和の人々が「おいおい、そんなこと言って(やって)大丈夫?」と目を丸くする劇中の言動が、ちゃんと笑える「ボケ」になる。昭和を直視できる。

そして、「昭和ってこんなことやってたんだなぁ」「ヤバいよね」「ナイわー」「いや、わりとアリなんじゃない?」と、昭和という時代がまるで100%悪というわけではないということもまた、話し合えるのだ。お断りテロップは、このドラマの優れた持ち味の中でも白眉である。