被害に遭って大きな傷を抱えている人がいる

「ギャラリーストーカー対策委員会」は、追い詰められた側の人が助けを求める形で生まれた団体だった……。

大学側としては「不審者を不審者と決めつける権利が誰にもない」という理由や前例がないため、どうにもできない、という状況が続いているとのこと。しかしメディアやSNSでのギャラリーストーカーの認知が上がってきていることで、少しずつ変わってはきていると松野さんは話しています。

さらに、出禁にした人物はいまだに武蔵美のイベントに来るそうです。松野さんは「今年も去年も、その人による付きまといや盗撮、個人情報を聞き出す被害に遭って、悲しんでいるし、すごく心に大きな傷を抱えている人がいるということを認めてほしい。そういう人が今も大学や、または卒業してこれから社会を歩んでいく人の中にいるということを、もう少し大学に訴えていけたらと思っています」と締めくくられました。

強者が陥るトラップ

私は、フリマなのに勝手に婚活パーティーを開催している男性を目撃した時、そのあまりにも現実と乖離かいりした彼の様子にショックを受けました。

男性が着ていたウインドブレーカーは大きなしみがいくつもついていて、お世辞でも清潔感があるとは言えない服装でした。目以外をすべて覆い隠し、だけど声の出し方は竹野内豊みたいで自信にあふれる口調で、同じ大学という共通点を駆使してフレンドリーに自分をアピールしていました。

フリマなのに。学生が作品をアピールする場なのに。

そうやって機械的に「女子学生」だけに吸い寄せられるように声をかけ続けていました。彼の孤独と余裕のなさを感じざるを得ませんでした。

私は、強者が陥るトラップに迷い込みました。

大勢の人たちが学園祭を楽しんでいる場で、1人だけ婚活パーティーのつもりかのように行動している彼を思い出すと、悲しすぎて、帰宅中の私の頭は混乱しきってしまい「自分は彼のような人から“楽しみ”を奪う存在なのでは」というあり得ない罪悪感が湧いてきました。この罪悪感こそが「強者が陥るトラップ」です。