子どもの考え方を受け止め、学習のしやすさを考える

大人はまず、子どもの考え方を受け止めることが大切です。「そんな屁理屈を言わないで、計算しなさい」と言っても子どもは納得できず、ストレスをためてしまうでしょう。問題の出し方をめぐって議論をしていては、子どもが計算を学ぶ機会がなくなってしまいます。それよりも、どうしたらその子が学習しやすくなるのかを一緒に考えていきましょう。

例えば、「文章問題ではリンゴとミカンの違いを考慮しない」という前提を説明すれば理解できるようなら、算数の文章問題の読み取り方を具体的に教えていくことで、問題は解決するかもしれません。説明しても納得できない子には、問題の出し方を変えて、計算に集中できるように配慮するのもいいでしょう。

文章問題に取り組み始めたときには引っかかってしまった子でも、さまざまな問題を経験するなかで算数の文章問題の法則を理解し、ある程度は対応できるようになっていくこともあります。大人の側がその子の学び方を理解しながら、いまどのような形であれば「算数」を学習できるのかを考え、問題の出し方やサポートの仕方を検討しましょう。少人数教室なども活用しながら、子どもに合ったやり方を模索していけるといいですね。

リンゴとミカンの違いは気にしない。果物2こ+果物3こと考える

子どもが言外のメッセージに気づかなかったら

自転車に乗っている友達が転んだら、自転車に「大丈夫?」と声をかける。ほかにも、公園の砂場でひとり遊びをしているときに、友達から「ひとりなの?」と声をかけられ、「4人家族だよ」と答える。

本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)

いずれの場合も当人の立場で考えてみると、その子たちなりの筋が通っています。倒れた自転車の損傷を心配してもいいはずですし、「4人家族」と答えるのは、理屈の上では必ずしも不正解ではありません。

しかし、多くの人に「どこか変」と思わせるのは、なぜでしょう?

実は、「ひとりなの?」という質問には「ひとりなら一緒に遊ばない?」というメッセージが込められています。また、「大丈夫?」と声をかけるのは、「私は心配していますよ」というメッセージを伝える目的があるからです。自転車に対しては、そのような目的は不要です。

「普通ならわかるでしょ」がわからないのが自閉スペクトラムの子どもたちの特性です。言外に込められたメッセージに気づかなかったら、そこははっきりと具体的に教えてあげてほしいと思います。

本田 秀夫(ほんだ・ひでお)
信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長

特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年より、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より現職。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会理事。著書に『自閉症スペクトラム』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(ともにSB新書)などがある。

フクチマミ(ふくち・まみ)
マンガイラストレーター

1980年神奈川県生まれ。女性誌や、書籍などの挿画、エッセイ・ルポマンガでも活躍中。女の子2人のママ。著書に、『子育てのお金まるっとBOOK』(新潮社)など、共著に『おうち性教育はじめます』シリーズ(KADOKAWA)などがある。