※本稿は、本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
外出先の病院などで、ちゃんと挨拶しない
親御さんは、お子さんが挨拶できないと思っている。それでお子さんに「ちゃんと挨拶しなさい」「ほら、こういうとき、なんて言うの?」と声をかける。私は診察室で、このような場面をよく経験します。みなさんはマンガを見て「挨拶ができない子に、どうやって教えればいいんだろう?」と思ったかもしれません。
「この子は本当に挨拶ができないの?」と考えてみる
しかし、このエピソードは「挨拶ができない」という話ではないのです。「挨拶はしているのだけれど、それが親には見えていない」という話なんですね。
マンガで診察を終えた場面を角度を変えて、もう一度ご覧ください。医師が「あおいさんバイバイ」と話して手を振ると、お子さんも軽く手を振り返しています。実はこれが、この子なりの挨拶なんです。このタイミングで、医師に対して挨拶をしているんですね。お子さんは手を振り返して挨拶を済ませたので、そのあと親御さんから「さようなら」と言うように促されたときには、反応が鈍かったのです。
角度を変えて子どもの様子を見てみると……
子どもの行動というのは先ほどのマンガのように、大人の常識とは違う形で行われていることもあります。親は「できていない」と思っていても、その子なりのやり方では「できている」こともあるのです。
挨拶の教え方を考えるときに、大人はどうしても常識にとらわれて「大きな声で」「相手の顔を見て」「丁寧な言葉遣いで」といった型を教えようとします。そして子どもが型通りの挨拶ができなければ、「この子は挨拶が苦手」と判断します。
そうではなくて、「この子はどんな挨拶をしているんだろう?」と考えると、その子なりのスタイルが見えてくることがあります。「手を振り返す」のほかにも、「会釈をする」「ボソッとつぶやく」「よそ見をしているけど返事はする」といったやり方もあります。
それがわかったとき、子どものスタイルに合わせて大人が挨拶を返すようにすると、その子の挨拶に対するモチベーションが上がります。