「指示待ち型は仕事ができない」はウソ
今どきの若い人たちは「指示待ち型」であると言われている。
確かにそのとおりだな、と思うこともある。
しかし私は、世間の人たちが言うほど、「指示待ち型」がダメだとは思っていない。
指示待ち型と呼ばれる人たちは、一般的に優秀である。何しろ、指示さえあれば、たちどころに指示通りに仕事をこなすことができるのである。
どんなに難しい指示であっても、指示に従ってやり遂げる。少し難しいかな、と思う課題を出しても、難なくこなしてくる。それが、「指示待ち型」と呼ばれる現代の学生である。
指示待ち型は、優秀な人間なのだ。
企業の方と話をしていると、「今の若い人は指示待ち型で困る」と愚痴るが、それは指示の出し方がまずいに違いない。
企業にとって「指示待ち型」は使いやすい
誤解を恐れずに言えば、指示待ち型の人間はロボットと同じである。
「○○について調べてレポート出して」というあいまいな指示では、動くことができない。
「この本の○ページから○ページを読んで」「○文字程度で、内容を要約して」「○文字以内で根拠を示して自分の意見を書いて」「レポートの評価基準は○○、授業のこの内容を書いていると加点します」「〆切は○日の○時です」と、ひとつひとつ指示をすれば、まさに私が期待するレポートばかりが〆切日ぴったりに提出されてくる。レポートは遅れるどころか、早目に出されることさえない。
ロボットが動けないとすれば、正しくプログラミングできていないことが理由である。
「指示待ち型は仕事ができない」という人は、指示の出し方が悪いのだ。
誤解を恐れずに言えば、指示待ち型の人間はイヌと同じである。
飼い主にとって良いことをしたら「良し」と言って褒める。ダメなことをしたら「ダメ」と叱る。
そのうちイヌは、何をすれば良くて、何をしたらダメかということを覚えて、飼い主の顔色を見て動くようになる。そして、飼い主が指示を出すのをずっとお座りして待っている。
イヌが動けないとすれば、飼い主の指示が悪いのだ。
指示待ち型人間は、ロボットやイヌと同じである。とても便利な存在だ。
おそらく企業という組織にとって、「指示待ち型」の人間ほど、使いやすい人材はいない。
最強の勇者だが、敵が現れるのを待つだけ
しかし、と私は思う。
本人たちは、それで良いのだろうか?
本人たちは、それで楽しいのだろうか?
指示待ち型の若者は、上半身が筋肉ムキムキの勇者を思わせる。
その勇者は「どんな敵にも負けない」と言いながら、椅子に座っている。そして、目の前に敵が現われれば、どんな敵でも倒すことができるのである。
しかし、その勇者がすることは、敵が現われるのを待つことだけだ。
扉を開けて外の世界に冒険に出ることもなく、椅子に座り続けている。そんな勇者である。
おそらくこの勇者たちは、小さい頃から、常に指示を与えられてきた。そして、指示通り動くことを求められ続けてきた。
指示待ち型の学生は、もともと指示待ち型だったわけではない。
指示待ち型に仕立てられたのだ。