日本人の株式保有比率は20~30%に上がる
――新しいNISAが2024年1月からスタートします。どう活用すればいいですか。
【パトリック・ハーラン(以下パックン)】新しいNISAは評価できますね。
【エミン・ユルマズ(以下エミン)】私も評価していますよ。岸田政権では批判されている政策もあるけど、新しいNISAに関しては評価していいんじゃないかな。逆に、「こういう発想がよく出てきたな」と思う。岸田さんは、海外の投資家が日本に来やすくて、日本人もより資産運用しやすい国にしたいと言っているでしょ。だから新しいNISAは、国策として「みんな投資しなさい」と言っているようなものだよね。
日本の個人資産は2100兆円(2023年6月末)を超えているけど、株式の運用されているのは約13%。これから20%、30%に増えていくでしょう。それを増やす1つの起爆剤が新しいNISA制度。証券会社の取引手数料は無料化が進んでいるから、さまざまな面で追い風が吹いているよね。
【パックン】ただ、NISAは非累進課税制度でしょ。投資できるお金に余裕がある人のみが恩恵を受けられる。キャピタルゲイン(売買差益に対する)課税はそもそも税率が低いし、頑張って労働して稼ぐ労働収入に比べて、非労働収入が税制で恩恵を受けるのはおかしいと思う。
投資を促進するためには、この悪は少し許すしかないなと思うけど。日本人にもお金がお金を稼いでくれるという概念に慣れてほしい。西洋では古くから当たり前になっているからね。
その代わり低所得者に対する他のサービス、手当や福祉制度を強化してほしいと思いますね。
キャピタルゲイン課税は下げるべきか
【エミン】私はキャピタルゲイン課税をゼロにしてほしいと思うよ。シンガポールみたいに。
【パックン】私は個人の税金を全部なくしてほしい(笑)けど、一生懸命働いて30%の所得税を支払っている人がいる一方で、キャピタルゲインが20%はちょっと納得いかないなあ。
【エミン】リスクをとって投資しているわけだから。20%でも高いんじゃないかな。資産規模で税率を変える方法はあると思うけど。
【パックン】その方法はあるかも。
【エミン】日本は米国のように金融資産が上位5%、1%の手に集まっているわけではないからね。
【パックン】米国は一部の人に集中しすぎているね。
【エミン】だから米国はキャピタルゲイン課税を重くしたほうがいいけど、日本は投資している人が少ないから、投資を促進する税制が必要。米国の状況と日本はまったく違う。米国には少し社会主義が必要で、日本には少し資本主義が必要じゃないかな。