若い世代は失われた時代の被害者
当然ながら、婚姻や出産とは完全に個人の自由意志で行われるものであり、政府を含めて第三者がとやかく口にすることではない。しかしながら、婚姻や出産を「個人の問題」としてしまうことは、その根底にある構造的要因、すなわち所得や学歴が高ければ高いほど、また雇用が安定しているほど結婚し出産でき、そうでない場合には仮に結婚の意思があっても結婚できないことに目をつぶることにはならないだろうか。
子孫を残すということは本来的には生物の本能行動であるはずだ。それが一定程度の所得や学歴がある人しか叶わない社会は、やはり許容せずに改善を目指すべきではと思う。これからの日本を担う若い世代が、将来への不安なく安心して恋愛・結婚し子どもを産み育てられるような社会になることを切に願いたい。
医師、博士(公衆衛生学)。札幌医科大学医学部卒業後、聖路加国際病院で内科医として勤務。その後、厚生労働省国際課および母子保健課に勤務。2014年、世界銀行より奨学金を受けハーバード大学公衆衛生大学院に留学、公衆衛生学修士(MPH)を取得。現在は、日本学術会議第26期連携会員、WHO西太平洋事務局コンサルタント、北海道釧路市政策アドバイザー(公衆衛生分野)を併任。