性加害の連鎖を断ち切るためにひとりひとりができること

人はそれぞれの性の価値観や嗜好性を持っていて、それらに影響されて問題行動をとる人もいるし、とらない人もいる。問題行動をとったにしても単に性的欲求だけで起こしたものはほとんどない。ですから、問題行動をとる人に対して厳罰化する、あるいは薬物を投与することで解決させようといった短絡的で乱暴な議論をするのではなく家族のコミュニケーションをはじめ、地域資源の充実など、どうすれば犯罪を防げる社会をつくることができるかという議論にシフトすることが大切です。

個人レベルのあり方も一度考えてみる意味は大きいでしょう。性被害体験から性加害化という現象は、そもそも加害者の一部にしか認められるものではないのですが、先に「被害を受けた人も早期に支援が受けられたら加害化を予防できる」と述べました。早期の支援は被害者の訴えに耳を傾けることから始まります。つまり次の連鎖を防ぐための受け皿はひとりひとりの考えや態度によってできあがっていくものだと思います。

※内閣府「男性のための性暴力被害ホットライン」は2023年12月23日まで。毎週土曜日の午後7~9時の間に相談を受け付け、電話番号は(0120)213-533。「男の子と保護者のための性暴力被害ホットライン」は毎週金・土曜日の午後4~9時で、電話(0120)210-109

参考文献
(※1)Conte, J. R. (1985). The effects of sexual abuse on children: A critique and suggestions for future research. Victimology, 10, 110-130.
Gilgun, J. (1991). Resilience and the intergenerational transmission of child sexual abuse. Patton MQ (eds.). Family sexual abuse. Pp. 93-105. Sage, Newbury Park, CA.
(※2)Briggs, F. (2021). From victim to offender: How child sexual abuse victims become offenders. Routledge.

構成=池田純子

高岸 幸弘(たかぎし・ゆきひろ)
熊本大学大学院人文社会科学研究部准教授

1997年熊本大学教育学部卒業、1999年熊本大学大学院教育学研究科(心理学)修了。その後精神科病院勤務を経て,2001年より情緒障害児短期治療施設セラピストを務める。2011年熊本大学大学院医学教育部臨床行動科学分野博士課程単位取得退学。2012年4月より関西国際大学人間科学部人間心理学科講師を経て、現在に至る。医学博士。臨床心理士。