継続取材で別班員がいかに心を壊されてきたかが見えてきた
別班の取材は現在も続けている。2013年11月28日に別班の記事が、新聞各紙に掲載されて以降、新たに別班OB数人と知り合うことができた。彼らとは、いまも時々会食し、話を聞いている。
ここでは、OBたちの話の中で、これまで詳しく記述しなかった重要な点を述べておく。
それは、陸上自衛隊小平学校(現・情報学校)の心理戦防護課程(CPI、現DPO)の教育が、いかに“洗脳”というにふさわしい、非人間的な教育かということだ。そして、別班での非合法な仕事がどんなに過酷で、人格を破壊するものかという点だ。元別班員と会ってまず気になるのが、彼らの“普通ではない”眼だ。相手の心の中を透視でもするかのような眼――元別班員たちは例外なく、私たちとは明らかに異なる“冷徹な”眼をしていた。
「何かあればトカゲのしっぽ切り。なぜ仕事しているのか」
以下、複数の証言者の発言を順不同で列挙して終わりたい。
■心理戦防護課程以降、妻子に対しても、心の中で壁をつくってしまう
■心理戦防護課程の教育を受けた結果 ①洗脳される ②何も感じなくなる ③壊れる の3タイプの人がいる
■別班員は自分の本性を出さない。一種の精神的な病気だ
■別班生活は、精神的にやられるか、どっぷりはまるかのどちらかだ
■防衛省が「別班が現在も過去も存在しない」と言ったときはショックだった
■国は別班の存在を認めて、海外でも活動できるような体制をつくるべきだ。今、別班がやっている活動は茶番だ
■何かあればトカゲのしっぽ切りだろう。私たちは何で別班の仕事をしてきたか分からない
■自分に何かあったとき、家族はどうなるのか常に心配だった
■別班という組織の全貌を明るみに出して、潰してほしい。そして、国が正式に認めた正しい組織をつくってほしい
1961年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。1985年共同通信社入社。現在、編集局編集委員。1994年から防衛庁(現・防衛省)を担当。安全保障問題を中心に、自衛隊のルワンダ難民救援活動、尖閣諸島領有権問題、南スーダンPKO日報問題などを取材。月刊誌『世界』(岩波書店)に「陸自『別班』危険な暴走」(2014年3月号)などを寄稿。