④子どもたちの方を向きつつ、背中に向かうべき海岸を向けて、「巻き足」で子どもたちの搬送を始めます。巻き足とは、立ち泳ぎの手法の一つです。

水上安全法では背の立たない水中で5分間の立ち泳ぎを求めています。でも、実際の現場では5分くらい立ち泳ぎがやっとできても意味がありません。溺れます。

⑤お子さんが1人だったら、「逆あおり」という泳法を使って海岸に向かって搬送します。いずれも救命胴衣を着装していると、距離のある救助搬送(自力移動)ではかなり体力を使います。搬送の様子と立ち泳ぎの様子は画像5と画像6にそれぞれ示します。

【画像5】要救助者の搬送
写真提供=斎藤秀俊さん
この方法「リアキャリー」だと、両手がふさがる。2017年5月、新潟県長岡市で行われた赤十字水上安全法講習会で
【画像6】5分間立泳ぎ(巻き足)の3分経過写真
写真提供=斎藤秀俊さん
すでに顔が水没している受講生がいる。最低でも5分間の立ち泳ぎが必須だ。2017年5月、新潟県長岡市で行われた赤十字水上安全法講習会で

赤十字水上安全法救助員養成講習会は、全国各地で開催されています。

新潟県の場合には長岡技術科学大学で9月23日、24日、30日、10月1日の4日間講習が予定されています。腕に自信のある方は、ぜひ「鍛えてもらえる」と期待して受講のお申し込みをしてください。詳しくは日本赤十字社新潟県支部にお問い合わせください。

子どもは浮いて待てたから助かった

水難事故で子どもが助かるのは浮いて待てたからです。浮くことができなかった親は力尽きます。

もしどうしてもお子さんの近くにいたかったら、子どもと一緒に浮いてください。でもできれば、ぜひ119番の救助隊を信じて、水に入らないようにして待っていてください。

斎藤 秀俊(さいとう・ひでとし)
水難学会理事、水難学者/工学者、長岡技術科学大学大学院教授

1990年長岡技術科学大学大学院博士課程修了。工学博士。水難事故、偽装事件、業過事件の解析実績多数。日常生活の一部である風呂から、池や海にいたるまで、水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故に関するさまざまな話題を、実験および現場第一主義に徹して情報提供している。
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