昔と比べて身長が高くても女性の婚姻率は下がらない
山村教授らは、女性の身長と婚姻率の関係についても分析しています。彼らの分析によれば、身長と結婚の関係が世代によって変化していることがわかりました。
具体的には、1965年よりも前に生まれた女性の場合、身長の1%増加によって、婚姻確率が約0.6%低下していたのですが、1965年よりも後に生まれた女性では、身長と婚姻確率には明確な関係が確認できなかったのです。
この結果から、昔は高身長が女性の結婚に不利に働いていたのですが、近年ではその傾向が弱まったと言えるでしょう。
性別役割分業意識が今よりも強かった時代では、身長が相対的にやや低めの女性が好まれていた可能性があり、近年ではその傾向が和らいでいると考えられます。
表立って言われないだけで「3高」は今でも健在である
以上の検討結果から、今でも「3高」は健在であると言えるでしょう。「高学歴」「高収入」「高身長」の男性ほど結婚しやすいという傾向は、変わっていません。
ただ、それでも結婚相手に求める条件として「3高」が明確に挙がっていないわけですが、おそらく「3高」が結婚相手としての基本条件であり、ハッキリと言う必要もなくなったということなのかもしれません。
(*1)武藤弘樹, 2022, 「結婚相手に求める条件は「3高」「3C」から「YSK」へ?翻弄され続ける男たち」ダイヤモンドオンライン, .
(*2)①加藤彰彦, 2011,「未婚化を推し進めてきた2つの力:経済成長の低下と個人主義イデオロギー」『人口問題研究』67(2): 3-39.
②佐々木尚之,2012,「不確実な時代の結婚:JGSSライフコース調査による潜在的稼得力の影響の検証」『家族社会学研究』24(2): 152-64.
(*3)荒川 和久, 2022, 「生涯未婚率『学歴』だけでこうも違う過酷な現実 親の収入低いほど子の未婚率が高いという衝撃」東洋経済オンライン,
(*4)Yamamura, E., Tsutsui, Y., 2017. Comparing the role of the height of men and women in the marriage market, Economics & Human Biology, 26, 42-50.
(*5)永瀬伸子, 2002, 「若年層の雇用の非正規化と結婚行動」『人口問題研究』 58(2); 22-35.
(*6)酒井正・樋口美雄, 2005, 「フリーターのその後─就業・所得・結婚・出産」『日本労働研究雑誌』535; 29-41.
(*7)Case, A., Paxson, C., 2008. Stature and Status: Height, Ability, and Labor Market Outcomes. J Polit Econ. 116(3), 499-532.
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。