回転寿司でコストの削減方法を学ぶ

価格の安い商品やサービスを提供しているビジネスであれば、「どうやってこの低価格を実現しているのか」という点に興味を持ちます。先ほどの回転寿司であれば、魚をどこでさばいているかなどに関心を持ちます。店でさばいているのか、セントラルキッチンでさばいて全国の店舗に配送しているのか、こうした過程でもさまざまな工夫をしてコストを抑えているはずです。

その効率のよさを自社のビジネスのどこに生かせるかを考えるのです。

高級店を訪れたときには、別の学びがあります。客単価1万円を超えるような寿司店であれば、「この金額を支払っても満足できたのはなぜだろう」と考えます。おいしさはもちろんですが、エンターテインメント性もあるでしょう。目の前で大将が握ってくれるのを見ながら、次は何が出てくるだろうという期待感かもしれませんし、大将との会話の中で得られるネタに関する知識がよりおいしくしてくれるかもしれません。

フレンチレストランで実感した付加価値

高級店であれば、当然、他店には違う付加価値を演出しているはずです。他にできない経験であれば、価格は関係がなくなります。評判のレストランであれば、前菜の前に提供されるアミューズから最後のデザートまで工夫を感じることができるでしょう。

経験したことがないほどの驚きが続き、飲むつもりもなかった高いワインを思わず頼んでしまうこともあるはずです。そうした、細部まで設計された一流の工夫や配慮により高いお金を払っても満足が生まれるのです。

ビッグモーターに話を戻すと、同社に関心を持ったビジネスオーナーがいたとすれば、通常の中古車販売業では得られないような利益を稼いでいる秘訣ひけつは何かと考えたでしょう。中古車販売だけでなく修理や車検までワンストップで行い、大型店舗という特徴はあります。また、CMも盛んに流していたので、他の中古車販売業に比べると多くの車が流通していたことは想像できます。ただ、普通のやり方では数字が合わないと感じたはずです。

今回、自動車保険の保険金不正請求問題などが発覚したことで、「そういうことだったのか」と納得したビジネスオーナーもいたでしょう。正直なところ、私もこんな方法だとは考えもつきませんでした。

すでに多くの人たちがビッグモーターの行った不正を批判しています。私もこの事件には大変驚きましたし、自動車に乗る者として憤りを覚えました。ビッグモーターに対してはもちろん、業界全体に対しても不信感を抱いた人も多いでしょう。これから業界が信頼を取り戻すためには、膨大な努力をすることになるでしょう。一方、ビジネスオーナーにはこの事件を受けて自分の襟を正した人もいるはずです長い間かけて築き上げたものが一瞬にして崩壊していく様を見て、自分の社内に問題がないか、チェックをはじめた人もいるでしょうし、改めて気を引き締めたと思います。

藤川 太(ふじかわ・ふとし)
ファイナンシャルプランナー

生活デザイン代表取締役社長。自動車会社で燃料電池自動車の研究に携わった後、FPに転身。家計の個人相談の普及を目指して2001年に設立した「家計の見直し相談センター」では、すでに3万世帯を超える家計診断を行っている。家計管理、生命保険、資産運用など幅広い分野に精通。『やっぱりサラリーマンは2度破産する』など著書多数。 生活デザイン株式会社 オフィシャルサイト