骨盤底筋を鍛えるセルフケアで膣周辺の悩みを軽減

尿漏れや骨盤臓器脱を予防するために一番大切なのは、出産後のケア。組織が弱っている産後2カ月間は、膣の入口に装着するクッション性の医療機器などを使用することをおすすめします。膣や膀胱などの臓器を下から持ち上げ、臓器脱や尿漏れを防ぎます。

産後からしばらくたっている人も、あきらめる必要はありません。臓器をハンモックのように下から支えている骨盤底筋を鍛える運動で、尿漏れや膣のゆるみ、骨盤臓器脱を予防できます。

やり方は、膣と肛門をギューッと10秒間締めて、そのあと10秒ゆるめる。これを10回繰り返します。仰向けで寝た状態もしくは椅子に座って行い、1日3セットを目安に毎日継続しましょう。軽度の尿漏れならば、この骨盤底筋訓練で症状の改善が期待できます。

骨盤底筋トレーニング中の女性
写真=iStock.com/Saito Fam
※写真はイメージです

骨盤臓器は骨盤低筋に支えられています。そのため適度に運動を行い下半身の筋肉を鍛えることは、全身の健康のみならず膣まわりの引き締めにも効果的です。ウオーキングや筋トレを習慣にして膣を若々しく保ちましょう。また、ニオイが気になる人は陰毛のお手入れをして、雑菌が繁殖しないように清潔に保つことも忘れずに。

セルフケアで改善しない悩みは早めに医療機関へ

前述した骨盤底筋訓練を続けても、症状が改善しない場合は、泌尿器科や婦人科などの医療機関の受診をおすすめします。女性ホルモンの低下とともに膣の萎縮が起こり、症状が進行する可能性もあります。

尿漏れや骨盤臓器脱、膣のゆるみ、性交痛など、このようなデリケートな悩みは人には相談しづらいかもしれません。しかし医療の手を借りて治療している人は多く、決して珍しい病気ではないのです。

医療機関によりますが、膣粘膜を引き締めるレーザー治療のほか、膣や膀胱などの深層部の筋肉に働きかける高強度の磁気刺激など、負担の少ない新しい治療法が確立されつつあります。

膣まわりの悩みがあると、女性にとっては日常生活を送ることが不快になります。どれか一つでも症状を感じたら、早いうちの膣ケアを始めましょう。

構成・文=釼持陽子

永尾 光一(ながお・こういち)
東邦大学 医学部 泌尿器科学講座教授

昭和大学で形成外科学を8年間専攻後、東邦大学で泌尿器科学を専攻、形成外科、泌尿器科の両診療科部長に。東邦大学医学部泌尿器科学講座教授、東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター長、同・尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長を務める。日本形成外科学会専門医、日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本生殖医学会(旧日本不妊学会)生殖医療専門医。