加齢により雑菌が繁殖しやすくなり膣のニオイが変化

40代以降では、昔より膣周辺のニオイがきつくなったと感じる女性も多いようです。おりものの量が多く、ニオイが強い場合に考えられるのが、性感染症などの病気です。性交渉によって感染するクラミジア感染症や淋菌感染症、膣周辺のかゆみや熱さを感じる膣トリコモナスなどが挙げられます。

しかし、ニオイが気になるすべての人がこれらの病気に当てはまるとは考えにくいでしょう。多くの人は、雑菌の繁殖によるものと考えられます。陰毛が生えている毛穴には、アポクリン線という汗腺が存在し、雑菌がつくとニオイが発生しやすくなります。

また、加齢によって新陳代謝が低下することもニオイの原因に。皮脂や汗がうまく代謝しなくなることで、肌や毛の周辺にとどまる時間が長くなり、雑菌の増加につながります。

ニオイが気になる人は、雑菌のすみかになりやすい陰毛を短くカットするか、陰部を洗って乾燥させ、清潔に保つことが重要。ただし、膣には自浄作用があり、膣内は乳酸菌によって他の菌が繁殖しないように酸性に保たれています。そのため、ニオイが気になるからといって膣の中まで指を入れて洗うのはNG。陰毛や陰部周辺の洗浄にとどめましょう。

尿失禁罹患率は10〜46%、出産経験者の44%が骨盤臓器脱

女性ホルモン低下による膣粘膜の萎縮が、性交痛や膣周辺の違和感につながると解説しました。それ以外に、女性の膣や膣周辺が大きく変化する原因となるのが出産です。

出産中の女性の手を握る夫と医療従事者
写真=iStock.com/Nimito
※写真はイメージです

当然ながら女性にとって出産は、膣や会陰、骨盤の下から臓器を支える骨盤底筋群などに大きなダメージを与え、尿漏れや膣のゆるみにつながります。笑ったり動いたりして下腹部に力が入ったときに、尿が漏れた経験がある人は多いのではないでしょうか。

健康な女性における尿失禁罹患りかん率は10〜46%とされ、決して珍しくない病気なのです(EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン)。

また、骨盤底筋群がゆるむと、膀胱や子宮などの臓器が下垂してくる骨盤臓器脱に。「臓器が下がってくる」というと不安に思うかもしれませんが、骨盤臓器脱の有病率は、20~59歳女性の30%、50歳代女性の55%、出産経験者の44%といわれ、多くの女性が経験しています(Samuelssonら Am J Obstet Gynecol1999)。

お風呂に入ったときに股のあたりに違和感がある、おしっこの向きが変わってきたなどの変化があれば、臓器脱のサインかもしれません。その場合は、早めに泌尿器科へ相談しましょう。