20~30代を中心に投資を始める人が増えている一方で、なかなか始められない人も多い。金融教育家の上原千華子さんは「行動できない本当の原因は自分の心の奥底に隠れていて、『行動しないという行動』を取らせているだけ。まずはその事実に気づいて心の重荷を降ろすところから始めよう」という――。

※本稿は、上原千華子『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

職場でのセミナーに出席するプロの女性のグループ
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資産運用を始められない人の心のブレーキ

人生100年時代、物価高騰、政情不安。漠然とお金の不安を抱える人は多いのではないでしょうか。

その解決策のひとつが「資産形成」ですね。

実際、20~30代を中心に投資を始める人が増えています。

一方、資産形成の必要性を分かっていながら、なかなか始められない人が多いのも事実です。

なぜ分かっていながら、なかなか行動に移せないのでしょうか。

「これって私のことかも?」と思った人、安心してください。同じ悩みを抱えている人はたくさんいます。

投資が怖くて、なかなか一歩を踏み出せない

私がよく受ける相談の中から、具体的な理由を見ていきましょう。

私のセミナーには、「投資が怖くて、なかなか一歩を踏み出せない」と悩む方がたくさん参加されます。

その中には、投資が怖い理由がはっきりしている人もいます。

まずは、身近な人から投資の失敗談を聞いた、または目の当たりにしたケースです。

「父が投資に熱をあげて、老後資金の大半をなくしてしまった」
「祖父が高リスク商品に投資しオイルショックで大損失、一家離散寸前となった」

などです。

お話を伺うと、ほとんどの場合は「投資」ではなく「投機」で、短期取引や高リスク商品の取引が原因です。

このように、身近な人が生活の基盤を失うほどの損失を被った場合、トラウマになりやすくなります。

投資に対してだけでなく、お金そのものに恐怖を感じる人もいるでしょう。

むしろ「怖い」と思うことは当然に思えます。

こういう心理状態の人は、投資を躊躇する傾向にあります。

仮に投資を始めたとしても、苦しい気持ちになる、少額しか投資しないなど、消極的な態度になりがちです。

もうひとつのよくある原因は、両親から「投資は危険だから、やってはいけない」と言われて育ったケース。

その中には、投資の失敗談を見聞きした親が、家訓として子どもに伝える場合と、両親が「投資はギャンブルだ」と思い込んで、子どもに伝える場合などがあります。

その他にも、はっきりした理由なく投資に恐怖心を抱いている方もいます。

単に慎重な性格というだけでなく、お金に恐怖を抱くようなイベントが、過去にあったのかもしれません。

そのインパクトが強ければ強いほど、無意識に心の奥底に押し込んでいる可能性があります。